「つきのふね」2010/06/12 00:12

懐かしくってついつい、「DIVE!」を読み返したり。森絵都は、大人向けの話も好きですが、中高生向けのもいいです。
ストーリーの構成が上手くて飽きさせない、登場人物が個性的でそれぞれが光る設定やエピソードがキチンと用意されていて。
 そして、少年少女特有の純粋で、だからこそ不安定なところを丹念に拾ってくるのですねえ。


「そんなにあいまいに、人はおかしくなちゃうの?」
「平気でものを盗むってのも心の病気だ。あんたもあいまいにおかしいんだよ」
(中略)この世にはあいまいにおかしい人などいくらでもいるのかもしれない。

 本文に上記のようなことが書いてあったのですが、なるほど、この話に出てくる人たちはみんなどこか、正常でまっとうな道からふいに外れてしまって、うまく正しい軌道に戻ることができません。
 友達に対して痛恨の裏切り(と、当人は思っている)を犯してしまったさくら。彼女を救ってくれた智さんは、全人類を救う宇宙船の設計図を描き続ける病んだ人でした。
 でも、あいまいにおかしくなりそうな時に、助けになるのは、夢のように素晴らしい宇宙船じゃないのです。
「小さくてもとうといもの」
 ミルクコーヒーとか、他愛無いおしゃべりとか、お友達からの絵葉書とか。
 危うさも、そしてそれに呑み込まれない術も、本当に丹念に積み重ねていってくれた作品です。

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