「ザ・ロード」2010/07/12 00:51

 終末の世界。
 同じ時期に、タイトルも世界設定もそっくりな映画が公開されているのには笑いましたが、映画の内容は全然笑えませんでした。
 原作が米国のベストセラー文学で、映像もストーリーも役者の演技も、大変クオリティの高い映画だと思います。
 でも、感動的というより、気持ち悪い。世界の絶望感が強すぎて。最後にほんの少しだけ希望を見せてくれているのが、かえってそれまでの気持ち悪さを増幅させているようで。
 気分が沈んでいる時や食事前なんかには観ないほうがいい映画。
 空が厚い雲に覆われ、寒冷化して10年。枯れ木の森やゴーストタウン、どこまでも生き物や生活の気配の無い荒廃した風景ばかりが続き、飢えと病に苦しみ、人が人を家畜のように食料とし、希望の見えない旅が続く。
 登場人物には名前がありません。
 父と子が旅をする話です。寒いから、というだけの理由で南を目指しているのですが南へ向かえば事態がよくなるだろうと、本気で信じているようには見えません。
 父親は子供に「良き者」でいるようにと教えるのですが、ある日とうとう、自殺するために二発だけのこしていた弾丸の一発で、他人を殺してしまいます。
 この父親が、荒んでいるんですよねえ。自分たち以外の人間はみんな危険人物とみなして、明らかに悪い感じに咳き込んで。希望の見えない状況で必死に息子を守ろうとしているのですから無理も無いのですが、子供に自殺の仕方なんて教えないで欲しい。
 この状況でどこまでも優しくていい子な息子もちょっと異様な気もしたんですが、しかし、それでも、「良き者」であり続けた息子の言い分が正しかったわけです。
 父親は、どんなに思い出が辛くても自殺した妻の写真を捨てるべきでは無かったし、怖くても人と関わるべきだったのです。
 無垢な息子よりも嫌な経験を多く積んでいる分、それがとても難しいことなのだと、理解はできるのですが。