「東京島」2010/07/31 10:21

 また、後味の悪い小説を読んでしまいました。

 桐野夏生は、題材の選び方が上手いんですよね。刺激的な設定を容赦なく切り込んでいくので、序盤から中盤にかけては凄く面白くて、でも終盤になると失速してイマイチな結末になったり気持ち悪さばかりが溜まっていって読みづらくなったりすることが多々あります。
 でもこれは、とにかく最後まで一気に読めました。

 谷崎潤一郎賞受賞、映画にもなるそうですが、こんなエゴ全開で情緒不安定なヒロインを映像でどう表現する気でしょうか。
 これはギャクだと思って、読んだのです。女一人が周りの男たちにやたらチヤホヤされるのは少女マンガの定番ですし、無人島という設定も古典的というか漫画っぽくて(そういうジャンルってありませんか)、しかしその女は四十代後半の中年で、自分がモテるのを気分良く受け入れているのです。
 実際、ヒロインの清子の視点だけだった序盤は、イタイ女の愚かで滑稽な話として読めるのですが、そこに男たちの狂気とかオカルト(というか、二重人格)まで混じってくると、痛々しさがコメディ色を上回ってきます。
 性欲、食欲、権力欲、サバイバル生活に、文明社会へ帰りたいという切実な願望。
 人間のエゴを、可笑しいと笑うか、醜いと嫌悪するか。

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