「サウス バウンド」2010/10/01 09:05

 中島 美嘉の主題歌「永遠の詩」、純粋に生きる美しさがあってよかったです。
「お父さん、(この後どうなるか分からないけど、今は)かっこいい」
 と、戦う父の姿を前に、長男(小学生にしてはオトコマエさん)は言います。
 豊川 悦司演じる父親は、間違っていると思っていることには「ナンセンス!」とはっきりと異議を唱え、決して曲がらない人です。あまりにも極端で、東京編では子どもたちもうんざりって顔なのです。東京では、大人たちより子ども達の方が幼いながらも大人に見えました。これが、長男の事件をきっかけに西表島に引っ越してからは、うざいオヤジから一転、いきいきとしたかっこいい父親に見えてきます。彼の主張は、
「自分が正しいと思っていることなら、戦え。勝たなくてもいい」
 はっきり言って私は「戦るからには必勝」と思うのですが、しかし勝てる見込みばかりを考えていては本当に戦うべきところを見失うかもしれない、という恐れも持っています。たいていの人はそうでしょう、勝てそうに無いことならば引き下がり、受け流す。
 そんなところがない父親には、ちょっと感情移入しづらいのですが、感じ入ったところは、
「孤独を恐れるな。理解者はきっといる」
 この「理解者」こそが、天海 祐希演じる彼の妻です。彼女がいるからこそ、このオヤジは誰を敵に回してでも自分を貫けるのでしょう。相互理解、という愛が感じられるいい夫婦です。
 この夫婦はとてもしっかりと描かれているのですが、3人の子どもたちを含めたその他の人々の描写がちょっと薄いような気もします(私の理解力が足りないだけかもしれませんが)。彼らの声ももっと聞きたかったです。原作を読んでみたくなりました。