「MW」2010/10/10 23:54

 昨年の夏に観た映画。
 最近観た「大奥」に出演した玉木宏と、「十三人の刺客」に出演した山田孝之が共演。
 山田孝之も嫌いじゃないんですが、玉木宏と比べるとなんか華やぎに欠いて見えるんだよなあ。




 手塚治虫80thアニバーサリーって、他にもいい作品はありそうなものなのに、あえてコレですか。原作未読ですが、読みたいような避けたいような。
 稀に見る真っ黒なダークヒーローなのに、それでも格好よく見えてしまうのが凄い。
 玉木宏の演技力が秀逸でした。怖い。復讐のために殺すっていうよりむしろ、殺すために殺す。もちろん凄まじい恨みとか執念とかも察することはできるのですが、ことさら情感に訴えることなく、また小難しく哲学語ってシラケさせることもなく。「毒ガスを吸って」「モンスターになった」それで納得させられる狂気の姿。
 決して楽しい気持ちにはならない。
 演技といいカメラワークといい音楽といい、冒頭の島民虐殺全部焼却シーンからずっと、大きな分厚い甕の中に閉じ込められたような息苦しい感じで引っ張っていくのですがそれが途切れたのが船のシーン。
 それまで悪意以外の人間性を全て殺ぎとって、計算高く落ち着いて(けど冷たい感じとも違う。目に力が篭るから)行動してきた主人公が、ほんの短い間だけ動揺を見せた。子供の頃共に島を逃げてきた「相棒」を、勢いに任せて海に突き落としてしまった時。
 そこからはあんまり怖くなくなって、わりと普通にクライマックスへ。