「死んでも治らない」2010/10/21 23:52

 短編ミステリの面白さがギュッと詰まっていて、伏線の張り方がきっちりしていて、シニカルで、読後感は全然すがすがしくないのです。でもハマッたら病み付きです。
 大道寺圭は元警察官。警察官時代に遭遇したマヌケな犯罪者達の話を本にして出版したのだが、それをきかっけに、次々とトラブルに巻き込まれて……
 犯罪者たちのマヌケっぷりを描く、というとユーモラスな感じがしますが、この作者の特徴は人間の醜い行動をさらーっと、しかし容赦なく文面に叩きつけるところ。ユーモアをまぶしてあるので暗い話にはならないのですが、犯罪者たちよりも何よりも、主人公である大道寺が一番コワイ人物に思えてならない……
 書き下ろしの「大道寺圭最後の事件」は微妙でした。彼が警察を辞めるきっかけとなった事件で、各短編になんとなくリンクしてはいますが、ちょっと苦しいというか。ぶっちゃけ、話を五つに分断して各短編の間に挟んであるのが、読み辛いのです。何度かページを後戻りして筋や伏線を確認せねばなりませんでした。
 警察辞めてからも事件続き(というか辞めてからがタガが外れたように本領発揮)なので、全然「最後の事件」じゃないっていう若竹流の皮肉なんでしょうね。