「淀どの日記」2011/01/08 11:54

 今年の大河ドラマに合わせて、読み返してみました。図書館で借りた本で、昭和36年刊の、漢字とか古い形使っているやつです。
 何度も読み返した話ですが、やっぱり井上靖は面白いなあ、と思う。

 タイトルは「淀どの」となっていますが、本文中はずっと「茶々」と表記されていて、彼女の目を通した戦国時代を描かれています
 大河ドラマ記念で、ヒロインの小督について拾い上げてみると、
「だって仕方ないんですもの。心配したってしなくたって同じだわ。わたしたち、なにもできないんですもの」
 なんて、茶々が小憎らしく思うほど開き直ったことを言うですが、これは子供のころの話で、色々あるうちに彼女の印象は変わってきます。「あのお城で死んでいた方がどんなによかったかと思います」
 色々ってのは要するに結婚運の無さで、一番目のダンナは(無理矢理)離縁、二番目は病没、で、三番目が徳川の嫡男で17歳の少年……政略結婚な人生です。それにしても大河ドラマ、朝ドラで「おとうちゃん」やってウケた俳優を再びヒロインの亭主役にもってきて、芸の無い配役ですね。
 普通に脚本書けば、大河史上稀に見る鬱なヒロイン(三代将軍産んだあたりからは上り調子でしょうが)になりそうなんですが、「バツニなんてへっちゃらよ、政略結婚もお姉さんを滅ぼしちゃうのもこの時代ならトーゼンよ」と開き直らせるのでしょうか。彼女をいい子に見せるために無茶な脚本書かれたらヤだなあ。
 茶々の方はどう描かれているかというと、これが家柄を鼻に掛けてプライド高くて嫉妬深くて陰険で思い込み激しくて親バカで、女の嫌なとこ全開なキツイ性分です。
 ほとんどデレない人で他人に対してもあんまり好意的ではないのですが、気になる武将として京極高次(敵に回りますけどね)、頼りになりそうな人として蒲生氏郷(早死にしましたけどね)が出てきます。あと、前田利家の室(おまつさんですね)は好印象だったらしく、徳川の人質になることを同情していました。
 豊臣秀頼については全力で親バカ、息子が秀吉以上に立派な武将に見えています。なんとかして秀頼を勝たそう、生かそうとジタバタするのですが、息子の方は「もう俺はとっくに覚悟できてるんやからお母ちゃん黙っといてや」てな感じがぷんぷんして、言葉遣いは丁寧ながら母親を鬱陶しがっている様子が「息子」っぽい。
 井上靖は敗者に同情的なので、「みなの者、秀頼に生命をくれよ。今こそ城を出て、真田らが弔合戦をしよう」なんて格好よいことを言わせているのですが、ご存知の通り、結局城を出ないのですよ。最後に華々しくひと暴れすることを望んでいたのに、それすらできなかった……
 合戦は嫌いではない。「でも、合戦で敗けるのは嫌いでございます」という強気なお姫様が、秀吉の子を生んで一時の栄光をつかみながら、
「落城は度々経験いたしておりますから御心配には及びません」
 そんな、波乱の人生。