「獣の奏者 闘蛇編・王獣編」2011/10/06 11:53

 人は、獣は、この世に満ちるあらゆる生き物は、ほかの生き物を信じることができない。心のどこかに、常に、ほかの生き物に対する恐怖を抱えている。
(中略)
互いを縛り合ってようやく、わたしたちは安堵するのだ……

 NHKでアニメになっていたのを観ていたので、ストーリーは分かっているわけですが、こうして原作読んでみると今更ですが、よくできたアニメだったと思います。それと同時に、子供向けアニメにするにはあまりにも難しかったなあ、と。
 ヒロインの少女時代や学生生活なんかにオリジナル入れてカワイイ感じにしようとしているのですが、それに政治的なアレコレが絡み、イロイロと物事を理解していくにつれ、どんどん悲壮感を深め、冷めて、達観していく彼女。
 そういう暗い部分も原作のニュアンスをできるだけ忠実かつ分かりやすく再現しようとしていたんだなって思って「良質なアニメやった」と再評価したわけですが。
 でもやっぱり、難しいわ、テーマが哲学的過ぎて。
 主なテーマは、自分と異なる他者、他の存在とのかかわり方ってやつですね。ヒロインが思い入れる王獣・リランとの接し方がメインですが。ヒロイン自身、「霧の民」と呼ばれる一族の出だってことで、周囲から偏見の目で見られるような経験をしています。
 自分たちと異なる要素。それを認識した上で相手のありのままを認めることが、互いに心を通い合わせる第一歩。
 ヒロインの望みは、生き物が、その自然な有り様を保ったままで生きていくということなんですが、これが案外、難しいわけです。世の中には物事を回すための法則っていうかルールがありますから。
 それぞれの望み・思惑のために既存のルールを覆し変えていこうとする人々。
 その果てに生じる混乱。
 でも、混乱するだけってわけでは、ないんですよね。新たに生まれる絆もちゃんと描かれているから、やたら人死にの出るこの物語はなんとか、救われています。
 それと、今のこの時代では、王獣=大きすぎる力の効力および弊害ってことも、どうしても、考えてしまいますね。使い方次第ではたしかに有用なんだけど、でも、封印したほうがいいよねって。核問題になぞらえて。

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