「別離」2012/04/30 01:38

 パンフレットで解説されていた、イラン社会豆知識も興味深かったです。学校の先生がバイトで自分の生徒を家庭教師してるとか、映画見ただけじゃ「?」と思ったことも良くわかりました。
 イランって、石油が出るイスラム国で、仲の悪いイスラエルと張り合って核開発してるらしい??ってなくらいしか知らなかったのですが。
 元々親日派の国ですし、喧嘩相手を作らずにはいられない米国の主張に惑わされないで、今後も仲良くやって行きたい国だなあって、思いました。
 イラン好感度アップの主な原因は、この映画で丁寧に積み重ねられた、メッチャ普通な事象に親近感を覚えてしまうからですね。
 老人介護の問題とか、格差社会とか、自分のメンツを重んじる男たちとか、教育熱心な親御さんとか、でもいくら教育に力を入れても両親が離婚の危機にあって家族が別離するような事態になっちゃ思春期の娘さんは苦しみますよってコトを映画の冒頭で示唆して、ラストシーンでも、そこへ返っていきます。
 そんな、社会派ホームドラマなのですが、法廷ミステリとしても楽しめます。
 登場人物たちは、悪人ってほどのことはないのですが、しかしみんな、自分自身のそれなりに正当性のある主張に拘っていて、そのために衝突が起こり、チョットずつ良い道からハミダシた行動を取ってしまう。
 嘘が嘘を呼んで、事態が嫌な感じになって行って、でも最後に「コーランに手を置いて、誓ってください」と言われてしまうと、敬虔な信者である下層階級の奥さんは、「確信がもてないのに宣誓してしまえば、娘に災いが降りかかるかもしれない」……目の前の小切手と、自分と夫の面目を失ってしまうというのに、どうしてもできないのです。
 融通の利かないことです。異性や他人の排せつ物に触れることなんかにも厳格なイスラムの教えは、老人介護のお仕事でも不自由ですが、しかし、そういう自分に厳しい姿勢は、キライではありません。
 登場人物たちは誰も幸せになれず、どこまで後味の悪い映画です。ですが、人間の抱える普遍的な矛盾と、日本にはない異国情緒と、両方を実に巧みに見せてくれる作品です。

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