「わが母の記」2012/05/06 23:35

 青々とした、わさび畑。パンフレットに載っていた、鰹節とわさびをご飯にまぶして食べるってのをやってみたら、メッチャ美味しい!
 これは、公開されたら絶対観に行こうと思っていた映画。実際の井上邸で撮影されてたってあらかじめ知っていたら、役者そっちのけでお屋敷ばっかり見てたに違いありません。
井上靖好きで、卒論テーマにしたくらいなんですが、でも原作は未読。
 古き良き昭和って感じでした。風景の美しさ。人々の心の美しさ。お父ちゃんの育ての親が曾祖父のお妾さんだったって聞いて「フケツ…」てな末娘の反応が昔っぽい。
 妾って立場は、現代よりももっと、他人からは後ろ指さされるものだったのでしょう。しかし、作家の伊上は、実の母よりこの「土蔵のばあちゃん」に懐いていた。
 母と息子との確執。
 母が老いていって、記憶も判断も分けわかんなくなっていくこと。
 映画では、伊上の末娘にもスポット当てるのですが、素直に母親と息子の物語として書いた方がテーマがすっきりしたような気もします。宮崎あおい、十代の少女から大人の女性まで、上手に演技していましたが。
 女性たちの賑やかな映画でした。しょっぱなから、主人公の妹二人の喋くりで、主人公の子供も娘ばかり三人(実際は息子もいたのですが、けっこう、事実と異なる設定多いみたいです)で、さらに、奥さんに、メガネの美人秘書に、お手伝いさんに。
 主人公を役所広司がやっていたんじゃなけりゃ、女たちのパワーにかすんでしまってもおかしくない感じです。これもなんか、明るい亭主関白っぷりが、昭和のお父ちゃんっぽいのです。
 そして、樹木希林の、ちっちゃく丸まったオバアチャン。可愛らしさと憎たらしさを併せ持った「ボケちゃった」様子を好演です。さすがです。
 母と息子との関係性については、母親が渡したお守りとか、息子が母親をおんぶしたりとか、割と普通な演出でした。二人の演技も抑制されていたっていうか、直接ぶつかり合うってことがあんまりないんですよ、誰が誰かもわかんないくらい、婆ちゃんボケてるから。だからこそ、詩を読むシーンは、感動的だったかなあ。
 老人介護の問題は、確かに大変なんですが、でもどこか、微笑ましい感じもあって。わだかまりを抱えてはいても、ボケた婆ちゃんを邪険に扱う人が一人もいない。変わっていく婆ちゃんを嘆いたり、大変な思いをして腹を立てることがあっても、みんなで協力して面倒見ようとしている。
 みんなでやれば、介護って、アタタカイ。

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