「プラスマイナスゼロ」2012/05/13 11:47

 このふたりには、たぶん、わからない。
 でも、それはどうでもいいことなんだ。平凡なわたしが言いたくても言えず、やりたくてもできないことをやれるカッコイイ女と知り合えたことにくらべれば、どうでもいい。とてつもなく不運なのに前向きで、ちゃんと他人をかばったり思いやったりできる女と仲良くなれたことにくらべたら、どうでもいい。

 軽いモノを読みたくなると、やっぱり若竹七海です。短編連作学園モノ。ミステリや幽霊も出てきますが、本書はやっぱり、個性的な女子高生三人の愉快なやり取りが楽しいです。昔読んだ「スクランブル」みたいな。
 プラスとマイナスとゼロ。全然タイプの違う三人がなぜか一緒につるんでいるわけですが、「ゼロ」である平均的平凡少女が、一番言うことキツくってイイです。
 アル中DVの夫に深夜にお酒を買いに行かされてひき逃げにあってしまった可哀想な主婦に対しても、本気でどうしても嫌なら逃げたり離婚したりすればいいのにそれでも一緒にいたんだから当人も納得してたんでしょ、てな、辛辣さ。
 可哀想な人に対してもバッサリ!な毒の要素と、それをユーモアで包んでしまう、このバランス感が、読んでいて安心できます。
 今回はお気楽な高校生が主役なので、毒の部分は薄目で、ばかばかしいお笑い感が多め。
 文章もリズムのある一人称で、通勤時にサラッと読むのに最適でした。