「アーティスト」2012/05/19 22:05

 演出上、ほんのわずかに挿入される以外、基本的に音声なし。その代り、ずっとバックミュージックがかかっています。昔の映画館では、音楽は生演奏だったのですね、贅沢です。
 無声映画。
 役者の吐くセリフ、という大きな魅力を制限することにどれほどの意味があるのか。
 ありました!
 犬です!
 セリフ無きワンちゃんの表情、演技力が大いに発揮された映画でした。可愛いい、賢い、イイヤツだ!
 なんて。主人公の飼い犬以外にも、ちゃんと見どころはありました。
 無声映画時代の銀幕スターが、しかしトーキーという時代に乗り遅れて、株価の暴落なんかもあって、何もかも失ってしまう。そんな彼に寄り添うワンちゃん。
 その一方で、無名の新人だった女優が大当たりして、スターリズムを駆けのぼる。
 主人公は、自分の出演作品を「芸術」として誇りを持っていたもんだから、変に固執してしまったのですね。どんどん落ちていく彼の悲哀が切ないです。
 しかし、です。テクノロジー的に古くなってしまっても、良いものにはちゃんと、価値がある。
 大昔のファミコンソフトの名作が、最新ゲーム機のソフトに必ずしも劣るとは言えない、みたいな?
 そんなことを思い起こさせる映画でした。