「スロウハイツの神様」2012/06/19 21:52

 そんなことに自覚があるなんて自惚れてる。どうかしている。だけど、認めたい。
 あの子たちは、本当に僕のことが好きなんだ。

 まるで、あのトキワ荘のように。
 売れっ子ラノベ作家を中心に、若いクリエーターの卵たちが、一つ屋根の下で共同生活を送る……
 著者の辻村深月さんは、私より二つ年下で写真では結構美人さんで、ジャンルでいえば青春小説ってことになるのか、若い人に人気のある作家さんだと聞いていたので一度読んでみたいと思っていたのですが。
 スロウハイツの住人たちの群像劇っぽい構成にせずに、「ある事件のせいで一度筆を折った人気作家と、彼の作品によって辛い少女時代を救われた熱狂的ファン」の話に絞ったほうが良かったんじゃなかろうかと、思いました。
 なんか、どの登場人物も、嘘っぽくて薄っぺらくて。そういう人間心理や個性に理解や好感を覚えないわけじゃないんですが、まるきり共感がありませんでした。
 話が進むにつれて、序盤に表面だけ描かれてきた人物たちの裏側が出始めてきて、どの辺までが彼らの「優しい仮面」だったのかが見えてきて色々腑に落ちてはくるのですが、それでも、裏だろうが表だろうが、薄っぺらいのは変わらないんですよねえ。
 ただ、第十二章「環の家は解散する」で住人達がかつてなく一致団結し、続く最終章「二十代の千代田公輝は死にたかった」で最後の「裏側」が描かれる感じは良かったです。キレイにそれまでの伏線を回収して。
 強引やなあ、ありえへんなあ、という感覚は続いていましたが、小気味の良い「現代のおとぎ話」と、言えるのかもしれません。

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