「きことわ」2012/07/16 08:36

 抑え気味の、でも硬くはなくてむしろ甘やかさのある文章が、作品に合っています。
 昨年の、芥川賞受賞作。作者の朝吹真理子さんは私よりも六つもお若い方で。当たり前だけど、年々、自分より年少の作家さんが増えてくるなあ。
 なんでタイトルが普通に「貴子と永遠子」じゃないのかって思ってたんですが、読めば納得でした。この作品そのまんまって感じ。
 夢と現、事実と虚構、過去と現在、貴子と永遠子が絡まりあう。境目があいまいで、入り混じっている。今読んでいる記述が貴子のことなのか永遠子のことを語っているのか、一瞬わからなくなってしまうことが何度かありました。全然個性の違う二人なのに。
 毎年、夏の日をともに別荘で過ごした二人。
八歳だった貴子と、十五歳だった永遠子が、二十五年後、三十三歳と四十歳になって再会するお話。お話っていっても、昔を思い出しながら別荘のお片付けをするだけのことで、ストーリーらしいものはないんですが。
不思議な、倒錯感があります。