「abさんご」2013/11/18 00:44

 平成24年度下半期の、芥川賞受賞作。
 横書き、漢字を避けてわざわざ平仮名表記、一語の名詞ですむモノを回りくどく表現(たとえば「死者が年に一ど帰ってくると言いつたえる三昼夜」って、何のことかと思ったら「お盆」のことでした)・・・・・
 そんな感じで、文字数をたくさん費やし詳細に説明されていながら、ごく簡単な事象が読解しづらく、薄ぼんやりしたイメージになってしまう小説です。
 読みにくさのあまり最初の数行で一度本を置いたくらいですが、幸いなことに、思ったよりも早くこの文体には慣れました。
 慣れなかったのは、語られている内容の方でした。
 主人公(たぶん女性)が、自分の幼少期や親(おそらく父親)の死について、断片的な回想を述べています。述べているっていうか、夢に見ているっていうか、ぼやぼやと漂わせているというか。
 輪郭のはっきりしない、印象派絵画のようです。人の記憶って、そんなものかもしれません。
 印象が甘ったるいのは、特異な文体のせいだと思います。
 しかしきちんと読めば、語り手の思考は意外と冷静で論理的で、なんか冷たいのです。
 びっくりするほど体温の感じられない、好きになれない主人公でした。

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