「パーク・ライフ」「flowers」2013/12/24 21:58

 地上のデコレーションが派手でも、中身がすかすかのケーキなど、あまりありがたいものではない。
 という、吉田修一の2002年芥川賞受賞作。
 外側から感じられるイメージと内実とのずれを、「中身がすかすか」のまま淡々と描かれています。
 中身がなくてもゆるされる「公園生活」を楽しむ主人公は、それゆえにちょっと気になる女性が現れても、その内実に踏み込めません(名前も訊けないレベルで)。
 人は、うわべのイメージに簡単に感化されて、それに安心して生きていく。

 賞を取った「パーク・ライフ」よりも、本書に収録されたもう一遍「flowers」の方が、断然面白かったです。テーマ的に前者とかぶる部分もあるのですが「中身」の部分に何かがしっかり詰まっています。
 花のような、切なさが。
 雨のような、激しさが。
 どこら辺が面白いのかは、説明しづらいのですが。キャラが立っています。
 主人公の職場の先輩・望月元旦は趣味が我流いけばな。自分が徹底的にバカにされているバラエティーの録画を嬉しそうに他人に見せる人で、職場でパワハラ被害にあっている永井さんをバカにしていて、ある日やりすぎちゃって、主人公や他の同僚たちから袋叩きにあう、という・・・・・
 屈折した二重人格、やってることは無軌道自分勝手、でもなんか憎めない。
 愛があるから、切ない。