「鑑定士と顔のない依頼人」2014/02/23 23:16

 13年、イタリア映画。
 サスペンス映画に分類されるのでしょうが、謎解きものとしては、ストーリーが粗っぽくて「なんでやねん」と「やっぱりそうなるか」な感じなのですが。
 それでも面白い映画になっていた要因は、二つ。
 第一に、キャラが立っていて、キャスティングがハマっていたと思います。主演はジェフリー・ラッシュ(「英国王のスピーチ」で王様の演説指導をやってた人)で、凄腕オークショニアだけど食事中も手袋をつけている変人で人付き合いは苦手で女性とは目も合わせられない、でも名画の中の美女は大好き、という、「女は2Dに限る」お人です。
 モノの真贋の見極めは一流だけど人間を観る目はカラッキシなために大事なモノなにもかも失ってしまう。そして最終的に、以前よりも深く自分だけの陶酔の中に閉じこもってしまうわけですが、このラストシーンが人間の哀愁と奇怪に溢れていて大変美しゅうございました。
 ラストに象徴される倒錯したイメージが、この映画を面白くさせる第二の要素で、どことなく江戸川乱歩チックな不気味さと美しさを兼ね備えた設定がたっぷりなのです。
 隠し扉の中には整然と並ぶ手袋、さらにその奥にはちょっとしたホールほどの部屋の壁いっぱいに女の肖像画、どんどん値のつりあがっていくオークションの裏側で取り交わされる秘密取引、アンティーク家具や美術品でいっぱいの屋敷、壁の奥の隠し部屋に何年も引きこもっている美女、謎の歯車が組み合わされて徐々に出来上がっていくオートマタ、謎の数字を呟き続ける小人(ここら辺が乱歩っぽい)の女、おとぎの国のようなプラハの街並み。
 隠されているもの、偽り、贋作。そんな胡散臭さの中に潜む真実。

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