東より2014/05/01 00:32

 奈良京都が近所にある関西人の多くにとってなじみ薄い東の古都、鎌倉へ行ってまいりました。初鎌倉。
 丸2日間で、1.5日は鎌倉寺社巡り、0.5日は横浜元町通りとか赤レンガ倉庫とか中華街とかをウロウロしていました。中華街では豚まんを食べました。たくさんお店がある中で、おそらく一番値が張るであろう一個500円。多種類の具材が使われて美味しいのですが、汁が多くて垂れてくるのが難点。それだけでお腹いっぱいになるビッグサイズでした。
 鎌倉は、なんといっても六月がアジサイ・菖蒲が美しいと言われるのですが、今回は四月末。木蓮も藤も盛りを過ぎ、ツツジも今一つ。それでも、「お花観光押し」な鎌倉です。建長寺の牡丹は見事に花盛りでした。シャガ(射干)もあっちこっちで可憐に咲いていました。
 シャガは普通に山中の草むらに薄青く咲く花ですが、鎌倉は山の多い土地。山の斜面に寺社が立つ。メッチャ山登りでした。京都のお寺巡りでは見られない、岸壁を四角くくり抜いた中にお墓をつくる様式がたくさん目につきました。やぐら、と言って、これも平地が少ないが故に、そういう形ができたのだとか。
 鶴岡八幡宮や源氏山のあたりは、修学旅行生や遠足小学生が多かったです。月曜は平日でしたからね。
 大仏の中にも入りました。入ったところで何があるわけでもない狭くて薄暗い空間なのですが(大仏建造の技術的なこととか見ただけで分からんもん)、でもプラス20円で国宝の中入れるなら、と。奈良の大仏よりも小柄で、銅像でピカピカしていないし豪華台座もない青空をバックにした大仏様は、なんとなく気安い感じがしました。
 鎌倉大仏にも昔は大仏殿があったそうですが、大水で流されてしまったそうです。海に近いのも、奈良京都とは異なる趣です。相模湾はキレイでウインドサーフィンがたくさん出ていましたが、残念ながら、富士山は見えませんでした。日差しはあったけど、水平線上の空は白く靄がかかっていて。
 それでも、お天気がもってくれただけ良し、とするべきか。二日目に元町をうろついている頃からパラついてきましたが、傘は使いませんでした。
 食べ物は、蕎麦が美味しかったです。シラス丼も。しかし、生シラスは食べ損ないました。春が旬だっていうのに。鎌倉カスターも、買い忘れてしまった!
 次に行くときは、有名なアジサイの季節か、江の島の方面に行こうかな。

「そこのみにて光輝く」2014/05/03 12:48

家族は、大切。
大切だから希望がある。
大切だからダメになる。

 トラウマ抱えた男と底辺生活に縛られた女の、ラブストーリー。
 お話自体は結構古典的な感じもするのですが、脚本が良かったし、役者陣もちゃんと演技派がそろっていて、暗い厳しい話なのに評判も客の入りも上々な映画です。
 今人気の綾野剛のパン一姿をたっぷり堪能できるんで、ファンの方は必見でしょう(実際、あの映画館の混み様は、綾野ファンが大きくかっている気がしました)。
 しかし私としては主演の彼はついでみたいなもんで。
 池脇千鶴、ガッツリ主演やっているのを見るのは「ジョゼと虎と魚たち」以来ですが、やっぱり名女優。汚く貧しい舞台において、ハキダメニ鶴的な美しさ、可愛らしさ、色気、強さ、悲しさ・・・・ビシバシくるヒロインでした。パンフレットのコメントで述べられていた各登場人物に対する洞察が深くて的確で、頭の良い人なのだなあ。
 しかし、それに匹敵するほど凄い存在感だったのが、彼女の弟役の菅田将暉です。仮面ライダーのフィリップ君や「ごちそうさん」でのヒロインの長男役でもカワイイ男の子やってくれましたが、今回演じた拓児の好感度の高さはそれまでとは次元が違います。
 とにかく汚い。下品でおバカさんでイランコトやって台無しにしちゃってどうしようもない。・・・なのに、憎めない、かわいい。まだ二十歳そこそこの若手なのに、役の作りこみ方が半端ナイ感じでした。今後も注目です。
 佐藤泰志の同名原作小説では二部構成になっているそうで、彼らの今後がどうなるのか、第二部を読んでみたいです。
 でも、映画の第二部を撮ってほしいとは、全然思いません。
 この映画がとても残念だったのは、私の苦手な画面がグラグラ揺れるカメラ演出があったことです。男と女が浜辺を歩く、それだけのシーンなのだから、せっかくの演技派俳優にしっとりと演技させて見せてくれたら良かったのに。要らん演出を。この監督の映画は二度と観るもんか。
 おかげで、微かな光の差すラストシーンは(高評判なのに)、しんどくてあんまり覚えていません。あーあ。

「獣の奏者 探究編・完結編」2014/05/11 23:27

 上橋菜穂子の、アンデルセン賞受賞記念ってことで。
 元々「戦蛇編・王獣編」で完結した小説だったのに、それから十一年後の世界が続編として描かれる。ヒロインのエリンちゃん、「三十代、子持ち、リケジョ」という児童向けファンタジー小説の主人公らしからぬ設定です。
 第一部で、最強の獣を操る術を会得した「最終兵器彼女」が、それゆえに続編では命を狙われたり戦争に利用されたりします。第一部に比べると、暗くて悲壮感が漂います。
 その一方で、母と子の物語でもあります。特殊な立場に立たされながらも、母親として息子の将来を思いやり、彼らのふれあいが丁寧に描かれます。彼女の波乱に満ちた人生における、何気ない日常エピソードの数々が、なんだか尊いモノに感じられてきます。
 しがらみに捕らわれ思うままにならない中で、何とかして家族を守り、最善の道を探そうとする(探究編)のですが・・・・・
 昔の王様が政治的判断によって秘密主義な掟でガンジガラメにしたことを、それが通用しなくなった現実を前にして、エリンちゃんはリケジョとして真相を暴くことに邁進します。
 ありのままの、自然な生き方を求めて。