「西部戦線異状なし」2014/06/07 09:54

 Im Westen niehts Neues
 今年はWWⅠ勃発百周年、ということで、レマルクによる超有名戦場小説。ドイツ小説にしては比較的すっきりした文章でしたが、図書館で借りたのがエラク版が古くって、訳がイマイチだったのが残念。
 最初はちょっと、ラノベっぽく感じました。二十歳前後の男の子による一人称で、趣味で詩や戯曲を書くような普通の文系学生だったのが、なりゆきで志願兵となり、戦場へ。過酷な体験によって価値観人生観は異様な何かに塗りつぶされ、戦闘時には嵐のように突撃し、非戦闘時には部隊の仲間たちとバカ話して、戦友の死に立ち会ったりする。
 それだけなら、漫画やアニメなんかでも無数に描かれてきた展開なのですが、大きく異なるのは、主人公が将校でもパイロットでもないごく普通の一兵卒であること。巨大ロボットを操ったり、目覚ましい活躍で味方を勝利に導くようなことはなく、戦況の全体像は分からないまま、しかし確実にプロイセンは苦しくなっていきます。
 塹壕、大砲、シャベル(近接戦最強の武器)。
 タンク、戦闘機、毒ガス。
 餓えと、疫痢と、戦友たちとの絆。
 休暇で帰郷した際に直面する、家族の苦しみと社会の楽観。
 いち兵士の肌で感じた、戦争の実態です。

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