「二つ目の窓」2014/09/29 23:03

 安全への配慮のためなのでしょう、「自転車のふたり乗り」というシーンがとんと見られなくなってきました。夏になってもゆずの名曲がラジオから聴こえなくなってしまったのも、そういうことなんでしょうか。
 ただし、映画の世界ではまだ「二人乗り」表現は許されているようです。五月に観た「そこのみにて光輝く」の男どうしの自転車二人乗りもほのぼのしていましたが、やっぱり基本は、高校生のカップルによる二人乗りですね。
 無条件にエネルギッシュで、微笑ましくて、甘酸っぱくて、鉄板です。

 川瀬直美監督作品はフランス人好みの難解なイメージが強くて鑑賞前は「ちゃんと理解できるかな」と心配していたのですが、それは良い意味でも悪い意味でも、取り越し苦労でした。
 奄美大島で育った少女の家庭は、親子三人とっても仲良しで、しかし島のユタである母親は病に侵され死期が迫っている。
 都会から移り住んできた少年は、親が離婚していて、共に暮らす母親が父親以外の男と会っていることを汚らわしく感じていて、付き合っている彼女に求められても応じることができない。
 という設定からして、大変わかりやすい対比です。それに加えて、なにかと親切な解説がついてくるのです。少年少女の成長のお話でもあるので、周りの大人たちが説教っぽいことを語るのも分かるのですが、ちょっと押しすぎな気がしました。
 哀れっぽいヤギの断末魔のシーンとか、確かにインパクトがあってナマナマしくって、でも強すぎて、なんかワザとらしさを感じます。
 島の人々の振る舞いや、唄や、荒々しい波や、台風の迫力や、少年少女の真摯な眼差し。そんなのだけでも結構な説得力があるのです。生と死と、自然と人と、男と女の有りようが、ビシビシ伝わってきます。
 ラストシーンも美しかったのです。美しい海を、力強く泳いでいく少年と少女。
 そこでビシっと締めてくれればよかったのに、島の爺さんのセリフなんて入れてしまった。蛇足感が、残念。

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