「ジーザス・クライスト=スーパースター エルサレム版」2014/11/02 00:07

 立ち上がって拍手を送り、オペラグラスを覗き、プログラムのキャスト記事を熱心に読み込む。
 そんな、劇団四季ファンの姿が興味深かったです。

 キリストの最期の数日間を、ロックやジャズ音楽に乗せて表現するミュージカル。映画版の「オペラ座の怪人」でアンドリュー・ロイド・ウェーバーの音楽いいなあって思っていたので、彼の出世作、一度観てみたかったのですね。
 本格的なミュージカルは初めて。後ろの方の一番安い席でしたが、舞台は茶色い荒野で衣装も地味なモノだから、細部は見えなくってもマアいいか、と。セリフはラスト以外ほぼ全部が、歌詞。
 しかし、正直、ジーザスさんやユダさんが何をそんな悩んでいるのか、よく理解できなかたんですね。理屈は分かるのです。人々が熱狂的に頼りまくってくるのに息苦しさを感じるジーザス。それを心配するユダ。でも、そんなにジーザスが好きなら、ユダさん裏切ったりせずにダメ元でも最後までジーザスの味方でいてやればいいのに、どうしてああなる?
 私がキリスト教に疎いせいかもしれませんが(笑)、帰り道に若い女性が「マリアってお母さんのこと・・・・」・・・・劇中登場する<マグダラのマリア>のエピソードもよく知らない観客もいるわけなので、日本での演出ではもう少し説明があってもいいんじゃないでしょうか?細かい説明はパンフレットまかせ?
 そんな感じで、話の流れに納得いかなかったのですが、「ミュージカルは話の継ぎ目をすっ飛ばして進めがち」ってなことをきいたことがあります。合理的なストーリーを求めずに、各場面場面を楽しむべきなのかもしれません。
 歌唱は当然、素晴らしいです。人間の声の美しさを堪能できます。ダンス表現も舞台でのお芝居ならではで、面白かったです。

「大地の子」2014/11/05 22:49

香港の学生デモのニュースを頭の片隅に置きつつ読書。
 色々難しいものだと思いますが、どうにか、頑張ってほしい。
 切に思いました。

 山崎豊子作品は初めて読んだのですが、もう、圧倒的でした。魂籠った力作。こういうヒドイことがあったのだと、歴史の知識としては知っていましたが、そんな薄っぺらい予備知識を蹴散らすような、リアリティです。
 文庫本で四冊。
 第一部は、戦後の逃避行と虐殺、国民党VS共産党内乱、文化大革命の狂気の中で、異国で孤児になった日本人孤児が、たくさん辛い目をみるお話。初っ端から狂ったような吊し上げシーンで、人間のキモい部分が全開です。
 第二部で、主人公の陸一心はようやく冤罪が晴れ、養父と涙の再会。そして物語は日中の製鉄所プロジェクトに移っていきます。
 第三部では、第一部であれほど苦悩した主人公が、実は超恵まれた境遇だったということが判明。一心の場合は養父母が出来た人間性だったおかげで大学教育も受けられ出世もできたのですが、大学どころか文字も読めない孤児たちが大勢。もっとも悲惨な例が、生き別れの妹ちゃんで、たった五歳で家族と離れて、貧しい農村でこき使われ、長じると嫁という名の奴隷として、妊娠出産夜のオツトメがある分幼少時よりヒドイ有様。病気になっても治療もゆるされず、一目でもお母ちゃんの国を見たいと願いながら、しかし、女の子らしい幸せを何一つ味わうことなく辛いばかりの生涯を閉じるのです。
 第四部で、主人公は子供を探し続けていた実父と再会するのですが、そのためにスパイ疑惑をかけられ、またも冤罪で地方に飛ばされてしまいます。
 中国人として生きてきたのに、出自が日本人である限りいつまでもマイナスがついてくる・・・・
 はっきり言って、中国社会と中国人のイメージがメチャメチャ悪い小説です(日本帝国軍や日本政府の対応も相当嫌な感じですが)。語りが冷静な分、週刊誌の嫌中企画よりもよほどインパクトあるでしょう。
 権力闘争が、人々の運命を振り回す。
その苛酷さの中で、懸命に生きていく。