「天地明察」2015/01/24 10:01

 冲方丁の歴史小説で、第七回本屋大賞受賞作。
 碁打ちの家に生まれた主人公が算数にはまり、全国各地で天体観測をして、新しいカレンダーを作るお話。
 映画にもなったけど、当時あまりにも話題になりすぎて返って観に行く気が失せたのでした。メディアがネタバレしすぎなのです。
 それで、忘れたころになってから図書館で借りてきました。文庫本で上下巻なのですが、上巻の方が下巻よりも面白く感じました。
 決して、後半が盛り上がらないというわけではありません。全体的に、ピンとこない感じだったのですね。観測と計算によって天体の運行法則を導く、というと確かに凄いのですが、しょせんカレンダーでしょう、という気がしてきます。新しい暦が政治的にも宗教的にも人々の暮らし的にも重要な意味があるのだと説明してくれるのですが、理解はできても気持ちがついていかないというか、何かが足りない気がします。
 算数的に喩えると、問題があって、回答もあるけど、そこへ至る証明や計算式はすっぱり端折ったというか、本当に計算式のように記号的というか。技術的な面など詳細に説明されても難しすぎることもあるでしょうが、それでもそういうものは必要だと思うのです。
 この人は凄いんです、この成果は凄いんです。本書では主人公やその周囲の事物に対してしきりに持ち上げます。
 しかし私には、最初の方にある、凄くなくて立派でもないあたりの書き方の方に共感を覚えました。ぬるま湯の様な人生に飽き、己の能力を発揮できないことに退屈し、真剣に打ち込める舞台を求める人々。
 戦国の世が終わり、新時代にふさわしい価値観、新しい生き方を求める社会。鬱屈の中にあって、もがき、間違え、壁にぶつかり、それでもなんとか、前を向く。

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