「小さいおうち」2015/06/13 09:32

やったよ!戦争が始まったよ!日本がハワイの軍港へ、決死の大空襲だよ!

中島京子の直木賞受賞作。
山田監督の映画版も素敵でした。内容はほぼ原作通り。
映画の方がメロドラマ色が強く、昭和レトロな美術、お着物が華やか。
原作小説は百合色の方が強くて、そして女中のタキちゃんの家事能力の高さが光ります。タキちゃんの料理本とか出てないんだろうか?
大好きな奥様を中心にしたホームドラマが物語の縦軸でありますが、戦前戦中の庶民史が横糸として描かれ、映画の映像と合わせて一つの「昭和資料」と見てもいいんじゃないかと思えてきます。
そのくらい、時代の空気がイキイキしている。楽しげで景気良さげでいたかと思ったら、いつの間にかキリキリした状況をすんなり受け入れてしまっていることを、一人の人間の実感として描かれていて。
最後の方に描かれた挿話が象徴的。絶望的に方向音痴なタケルくんが、しまいに手足を失って、なおも行ってはならない方向へ転がっていく・・・・・・
失われてしまったもの。愛しかった日々。苦い思いも含めて、とても味わい深い作品でした。

第32回文楽鑑賞教室 「五条橋」「曽根崎心中」2015/06/13 23:10

四月に観に行ったのと違って、入門編で上演短めお値段も控えめ。お客さんも学生さんらしき若い人が多かったです。上演パンフレット(ストーリーを漫画と床本と英語で紹介してくれる親切)と「鑑賞のしおり」が配られるのですが、しおりの前書きが有栖川有栖。この人いろんなトコで仕事してるなあ。
そして「文楽へようこそ」と題した解説コーナーがあるのですが、これ面白かったです。シャベリ慣れているというか、ツッコミ慣れた方が解説でしばしば笑いが生じます。スクリーンに人形が大写しにされるのも良かったです。私は後ろの方の席なのですが、やっぱりそれだと小さく見えるのですね。大きく、細部まで見える方が繊細なお人形の動きがよく分かります。もしかしたら生舞台よりTV向けなコンテンツなんだろうか。
一本目の「五条橋」は、良く知られたエピソードとは違って、牛若丸の方から弁慶にインネンつけて絡んでいって通りすがりの弁慶を舎弟にしてしまう。見た目優雅でもやってることチンピラだ!
私でも話の筋は知ってる超有名作品「曽根崎心中」。最終的にお初と徳兵衛は天神の森で心中しちゃうのですが、そのラストシーンまで、ひっぱるひっぱる。まだ死なない、明けの鐘が鳴るのになかなか死なない。
でも、脇差を振り上げてからは早く感じられました。太夫の声が終わり、三味線だけが響く中、小さくて声もない人形の、凄みのある死にっぷりでした。