「九年前の祈り」2015/08/02 16:15

朝刊の、一ページ丸ごと広告!文芸春秋の本気度が伝わってきます。
人気芸人という話題性だけでなくて、書評でも絶賛、会社のオッチャンも面白いとおっしゃっていて。
それでも、自分ひねくれているのかなあ、こんな広告見ちゃうと、デビュー作即芥川賞は、やっぱり文芸春秋売り込み目的なんじゃないかと思ってしまいます(未読)。




そんなわけで、かつてなく芥川賞が話題になった今になって、昨季の受賞作です。
まず、ウチの両親も大分出身なのに「こんな方言聞いたことない」のが印象的でした。地域によってだいぶ違ってくるのですね。
都会でバツイチになった女が、子供を抱えて実家に戻るのですが、なかなか厳しいお話だと思いました。
外見は可愛くても人に懐かず泣きまくる息子を、母親はしばしば「引きちぎられたミミズ」にたとえます。子供を心の底から、愛せない。
そんな状況に、九年前のカナダ旅行のエピソードが混ぜ込まれていきます。同行した地元のおばちゃんたちの天真爛漫な様はリアルで。
なのに、幻想的な様子にも思えます。主人公の回想、というフィルターがかかっているからでしょうか。
肝心な「九年前の祈り」がふわふわと曖昧なものだから、最後に厳しい状況にいたヒロインに光が見えるような演出になるのは、違和感がありました。
実際に、おばちゃんたちと再会して元気をもらう、的な展開なら分かりやすいのですが、会いに行く前の段階なのです。
考え方を変えてみれば。
フィルター付き幻想回想であるから、祈りの部分だけをすくい取れたのかもしれません。リアルな現実では、具体的な困難も、目につきやすいものですからね。