「ロードス島攻防記」2015/09/27 01:43

塩野七海の初期作品であるイスラムVSキリスト教世界三部作は、第一作目の「コンスタンティノーブルの陥落」がすごく好きで、他二冊は自分の中では少々落ちる。
それをまた読み返したそのわけは、篠原千絵の歴史ロマン漫画で、このスレイマン1世のロードス遠征を描いていたから。
漫画なので登場人物はたいそう美男子に書いてくれているし衣装とか建物とか調度品とか戦争シーンとか、ヴィジュアルで迫ってくれて面白いのですが、それ以外の情報密度が物足りないというか、わりとアッサリです。
逆に塩野七海の小説の方は、説明が長い。なかなか戦闘が始まらないし、特に登場人物に長々と説明的なセリフを喋らせて魅力半減させているのが残念。
しかし、改めて読み返すと、やはり面白い。漫画で足りなかった情報(戦術面とか補給とか歴史背景とか)を補足するには十分すぎるほど。
強大なオスマン帝国の若き皇帝と、それに抗う聖ヨハネ騎士団。獅子と蛇。新たな勢力が十字軍時代からの旧勢力を蹴散らすお話なのですが、両者ともに、持てる力を振り絞り、誇りを掛けた戦いで、勝者も敗者も称えた著者の筆が快い。
現在、この地上にオスマン帝国は無く、でも聖ヨハネ騎士団はいまだに存続しているっていうのが歴史の面白みですね。騎士団と言っても、今は戦闘集団としてではなく、医療集団として。宗教組織らしい奉仕活動を行う。苦難の歴史を歩みながらも絶えず存続するその力強さしぶとさに感動すら覚えてしまう。