「恋人たち」2016/01/01 00:32

最近、日本映画が、あんまり面白くない。美術や映像にこだわりを持っていたり、演技派の役者さんを起用していたり。でもなんか脚本・演出が今一つってことが多くて。
橋口亮輔監督の「恋人たち」(こんなタイトルだけど、恋愛映画じゃないと思う)も、連続した一つの物語っていうより、エピソードとエピソードを継ぎはぎした感じ。
そもそも、三人の主人公たちの全く別々のお話を代わる代わる映していく構成なのだから、なおさら継ぎはぎ感があります。
それでも、この映画は、それでいいんじゃないか、という気がしてきます。キレイにまとまらない。主人公たちは、世の中の理不尽を前に不器用に生きているから。
不器用っていうのは、見ようによっては頭悪くて、イタイ生き様です。
奥さんを殺されて精神的に不安定な男。
プリンセスに憧れるパートのおばちゃん。
友達にあらぬ疑いを掛けられる、ゲイの弁護士。
彼らのイタイ感じと、彼らなりの切実さと、そして世界の滑稽さロクでもなさ。
そういったことを、否定も肯定も無くありのままに映し出す。
スッキリしない状況がずっと続く映画ですが、ラストシーンはとってもキッパリしていて私好み。

STAR WARS―エピソード4、5、62016/01/02 11:45

紅白にまで出てきたベイダーさん。
新作の宣伝がスゴイですが、観に行きたいような、怖いような。
インディ・ジョーンズがジイサンなのは全然かまわないけど、ハン・ソロが年喰っちゃうのは何か、イヤ。
旧三部作が好きで。先月TV放送(何故か、全部違う放送局)されていたのを録画してまとめて鑑賞したのですが、やっぱり、面白いです。
自分が生まれる前の70年代作品なのに、全然古く感じない。一作目のアクションシーンとか見ていると、とってもゲーム向けだなあ。
改めて思うのは。
ルーク(いかにも主人公な好青年)、ソロ(アウトロータイプ)、レイア(行動派毒舌ツンデレ姫)の三人組と、チュウバッカと二体のロボットのマスコット組。
彼らの掛け合い、チームワークが良いのです。壮大な宇宙を舞台にした善と悪の戦い、なんてタダノ添え物です。
やはりTV放送されていたエピソード1も見てみたけど、そういう魅力がサッパリ感じられなかったんですねえ。子供がはしゃいでいるばっかりで。女王様可愛いけど、それだけで終わっちゃう感じで。
新作、どうしようかなあ。

「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」2016/01/03 00:27

年末年始は見逃していた映画のTV放送を見まくる習慣でもあります。
原作をチラ見して「これすっごいよく分かる!」と感動したのですがいつの間にか上映期間が終わってしまっていた作品。
どうしても劇場で、って作品じゃないですが、佳作だと思います。
年齢も職業も違う、でもなんとなく気の合う三人の女性が、それぞれの人生であれこれにコツンとぶつかり、それぞれに前を向いていく。
こないだ観た「恋人たち」も主人公三人の人生のハードルをかわるがわる描いた映画でしたが、「すーちゃん」の方はもっと軽やかです。元々が四コマ漫画ですし、彼女たちの悩みとリアクションが、ごくごく普通の女性像にフィットしています。劇的にドラマチック、とはいかないけど、等身大っていうか、共感しやすい。
そして、華やか。可愛い。出来事自体は普通の女性っぽくても、演じる女優さん方の美しさは普通じゃないですから。そこがステキでもあり、敗因でもあるのかなあ。私は特に柴咲コウ(すーちゃん)が好きなんですが、まばゆい美しさ堪能です。
美しい女優さん方がキャッキャして、女子力高そうなカワイイお部屋に、おいしそうな料理。エンディングもカワイイ。彼女たちの味わう苦い思いアレコレを、中和してくれます。
一つ残念だったのは、全体的に説明が丁寧すぎたこと。最初のうちは、原作と同じように登場人物たちの「一言感想」って感じの短い詠嘆で括っていたのですが。
特に最後の、すーちゃんの「追伸」としての独白は、バックの映像だけでも十分伝わってきたので。丁寧で分かりやすいのはイイのですが、最後だけは、やりすぎな気がしてちょっともったいない。

「独裁者と小さな孫」2016/01/08 00:13

タイムリーに、って言い方は変ですが、独裁国家がまた、イタイことやっちゃったよ。
この国は早う、誰かが革命を起こさにゃいかんのですが……



難しいことを易しく、易しいことを深く。って言ったのは誰だったかしら。
まさに、そんな感じの映画です。クーデターで追われる身となった大統領が見たのは、煌びやかな首都から一転、貧しい風景。腐敗した軍隊、自分を憎む民衆たち。
そこに、小さな孫が加わって、映画に奥行きが出ます。5、6歳くらい、大統領をミニチュアにしたような小さい軍服を着てとっても可愛らしいのですが、甘やかされたワガママくそがきでもあります。こういう話にイタイケナ子供を使うのはちょっとズルいと思うのですが、でも彼の存在のおかげで、自分勝手な独裁者も普通に孫を守ろうとするオジイチャンであるってことがすんなり入ってきます。
直接心情が語られることはありませんが、独裁者の心情にも変化が出てきます。
独裁国家はロクでもない、民主主義万歳。
という分かりやすいメッセージでありながら、しかしその先があります。
独裁者を倒した、その後どうするのか。みんなが怨嗟の声を上げるのは当然だけど、憎しみと暴力のみで何が生み出されるか。……「アラブの春」の失敗を意識しているのが伝わってきます。
テヘラン生まれのモフセン・マフマルバフ監督ご自身が、イラン政府に狙われて外国で様々な活動をしているという、結構ドラマチックな人生を送っていらっしゃいます。
ジョージア、フランス、イギリス、ドイツと多国籍資本のジョージア語映画で、固有名詞は一切使われず、あらゆる国の独裁者を連想させる、寓話となって、観客に問いかけてきます。

「最強の二人」2016/01/09 14:59

たいへん評判の良い映画でしたが、公開当時全くのノーマーク作品でした。
タイトルから、バトル・アクションものだと思っていたから。
そういう意味の「最強」ではない。でもなんか納得の「最強」。
芸術に造詣があり、首から下が動かない障害者のお金持ち。
陽気で下品で遠慮のない、貧乏な黒人。
楽しい友情物語。
二人が出来すぎなくらい対照的で、お金持ちのおっさんの邸宅が本当に豪勢な宮殿みたいで、なんだか返って作り物めいた現実感の無さも感じるのですが。
映画冒頭、「これは事実を元にして」と言われてしまうと。
こんな、夢のように素敵な人間関係が、実現できるのだということが感動的っていうか、なんか、希望を感じてしまいます。
己と違う種類の人間を排除する風潮は根強く、じわじわと広がっていく気配すらあるけれど。
お金では買えない、まさに最強のふたり。

「海難1890」2016/01/24 23:31

困っている人苦しい思いをしている人に対して、手を差し伸べるのが人の道。
一言で簡単に言ってのけられるほどテーマは単純で、ストーリーもけっこう宣伝されているので意外な展開なんてものは無い。
だから話の筋以外の要素でどれだけ観客をひっぱってこられるか、が(私的には)重要だったのですが。
タイトルにもあるトルコ船の難破シーンに力が入っていたのが良かったです。この怒涛のシーンがあったからこそ、その前、使命を果たしてようやく故国へ帰れる皆さんが家族への土産物を大切に見つめるシーンが生きてきますし、事故の悲惨な結果と和歌山の皆さんの献身的な救助活動も説得力が出てきたと思います。
時代が変わって、空爆予告されたテヘランの混乱した様子も、ドキュメント映画みたいで緊迫感がありました。そんな中で、日本人に飛行機を譲るトルコの皆さん……なんて良い人たちなのだろうって、素直に思いますよ。イスラム教徒の、持たない人たちに分け与える精神って貴いなあ。どこまでが映画的演出なのか分かりませんが、これは時代が新しい分その時の現場証人もまだまだ居る話なので、極端な改変はないかと思います。
ヒューマニズム映画らしい「感動の演出」が鼻についたら嫌だなあ、と思っていたのですが、そういうのが無いわけじゃないけど、それ以上に全体的に細かい部分を丁寧に積み重ねてあって、いい映画だったと思います。
ただ、最後。
しみじみしたエンディングテーマが流れ終わり、いきなり画面に現れた現職のトルコ大同僚!あまりにびっくりしたのでどんなメッセージだったんか全然頭に入らなかったのですが、この人は今はシリアに空爆したりクルド人ともめたりロシア人ともめたり国内のテロ対策でテンヤワンヤなハズ。
美しいヒューマニズム映画を見ていたのに、いきなり生臭くなったというか政治臭くなったというか。日本上映版でトルコ大統領が出てきたというコトは、トルコ上映版では日本の総理大臣のメッセージもあったんだろうか・・・なんて考えちゃうと、映画の余韻も何もあったもんじゃないです。

「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」2016/01/30 15:33

映画を見た後飲み屋で一杯やったのですが、そこのお客さんの一人(私と同年代くらい?の兄ちゃん)は大絶賛。もうお一人、もう少し年配の背広のオッチャンは世界観があわなかったそうで、途中で映画館を出てしまったとのこと。荒野にゾロゾロ美女たちが現れるあたりは見てないって、そこから、物語は転がっていくのに……

昔からのシリーズものを今更見る気にならなくってノーチェックだったのですが、どこの映画評でも大絶賛。
そこで、キネマ旬報15年外国語映画部門一位記念で緊急上映されたのを、遅ればせながら鑑賞。
北斗神拳のない(したがってケンシロウもラオウもいない)「北斗の拳」、って感じで、「このイカレタ時代へようこそ♪」な映画です。水なし、石油なし、文明崩壊世界で、広大な荒野で繰り広げられるカー・アクションが売り。アクションはCGなしの方が武骨でカッコ良いと再認識。
爆走車上でギター弾きまくってるバカとか、あらゆる方面でやりたい放題なクレイジーを楽しむ作品。勢いが9割ですが、のこり1割細かい部分の設定も確固として、この世界に引っ張り込まれます。
主人公のマックス(トム・ハーディ)以外では、やっぱりフュリオサ(シャーリーズ・セロン)が美人で格好良かった。この女戦士が次回続編の主人公って噂も納得。
それから、どう見てもヤバい感にイカレタ戦士だった男が、自らの肩のヤバい感じの瘤(腫瘍だよね)に顔を描いて名前を付けて「友達」と言う……イカレタ世界でもイカレタなりの人間性ってのがあるのだなあ。
ヤバい、という単語を形にしたような映画でした。