「独裁者と小さな孫」2016/01/08 00:13

タイムリーに、って言い方は変ですが、独裁国家がまた、イタイことやっちゃったよ。
この国は早う、誰かが革命を起こさにゃいかんのですが……



難しいことを易しく、易しいことを深く。って言ったのは誰だったかしら。
まさに、そんな感じの映画です。クーデターで追われる身となった大統領が見たのは、煌びやかな首都から一転、貧しい風景。腐敗した軍隊、自分を憎む民衆たち。
そこに、小さな孫が加わって、映画に奥行きが出ます。5、6歳くらい、大統領をミニチュアにしたような小さい軍服を着てとっても可愛らしいのですが、甘やかされたワガママくそがきでもあります。こういう話にイタイケナ子供を使うのはちょっとズルいと思うのですが、でも彼の存在のおかげで、自分勝手な独裁者も普通に孫を守ろうとするオジイチャンであるってことがすんなり入ってきます。
直接心情が語られることはありませんが、独裁者の心情にも変化が出てきます。
独裁国家はロクでもない、民主主義万歳。
という分かりやすいメッセージでありながら、しかしその先があります。
独裁者を倒した、その後どうするのか。みんなが怨嗟の声を上げるのは当然だけど、憎しみと暴力のみで何が生み出されるか。……「アラブの春」の失敗を意識しているのが伝わってきます。
テヘラン生まれのモフセン・マフマルバフ監督ご自身が、イラン政府に狙われて外国で様々な活動をしているという、結構ドラマチックな人生を送っていらっしゃいます。
ジョージア、フランス、イギリス、ドイツと多国籍資本のジョージア語映画で、固有名詞は一切使われず、あらゆる国の独裁者を連想させる、寓話となって、観客に問いかけてきます。