「ナショナル・トレジャー」2016/02/08 00:03

今年に入ってから結構いいペースで映画観に行っていますが、それでもまだまだ見たい作品も見逃しちゃった作品もたくさん。
昨日録画してあった土曜プレミアム、2004年、ディズニー作品。
とっても正統派な「宝探し」映画。「インディ・ジョーンズ」とか「グーニーズ」とか思い出します。正直謎解きのあたりは良く理解できていなくて何かコジツケっぽく感じましたし、米国建国の歴史には疎いので要所要所での主人公たちの感動がピンと来なかったりするのですが。
でもスパイアクションっぽい作戦行動やアクションは面白かったです。主人公側だけじゃなくて宝探しの競争相手の人も(最後のツメ以外は)ちゃんと有能に動いていたことも良かったです。敵役がショボイとご都合主義っぽくなったり緊張感が失せますから、ここ重要です。
独立宣言書を守るために女の手を放して放り出しちゃうのは笑いました。それでいて、もっと古いお宝の保管場所に盛大に火の気を上げるという・・・もちろん、映画的な「見せ場」としての演出だっていうのは分かるのですが、小説として書くんだったらお宝の内容を細かく列記する感じになるんだろうなあ。

「消えた声が、その名を呼ぶ」2016/02/13 16:18

先月観た「海難1890」とセットで観ようと思っていた作品。「海難1890」がヒューマニズム映画なのに対し、同じトルコを舞台にしていながら、こちらは、大虐殺が行われます。
映画の前半がオスマン・トルコ内の少数民族ジェノサイド、後半が主人公の娘探しの旅、という構成ですが、虐殺シーンがひどすぎて娘探しの方の印象が薄まったかなあ。
100年前のこの蛮行についてはこの映画を知るまで全く無知でありましたが、パンフレットによると、アルメニア人側は150万人が犠牲になったと言い、そして現在のトルコ政府はせいぜい死者5万人くらいで戦争中の不幸な出来事、みたいな扱いで、両国の関係に暗い影を落としているという……なんかどっかで聞いたことあるような。負け戦で落ち目な政府ってのは常軌を逸した非道をやってしまうようです。
何でこんなことしたのか作品内では説明されませんが、イスラム教のトルコ帝国内で、キリスト教のアルメニア人が暴動起こすんじゃないかって思われていたようです。「死の行進」の意味もよく分からなかったのですが、その目的はなんと、「飢えと渇きと疲れで死ぬまで歩かせ続ける」だそうで、その結果の死屍累々シーンだったのでした。ガス室作っただけナチスが人道的だと錯覚するほどの非道で、なるほど、トルコのタブーだなあ。
私の勉強不足のせいもありますが、映画見ていて「なんで?」て思うことが多かったのがなあ(疑問点が多すぎてパンフレット買ったようなもの)……娘探しで北米の南の辺りにいたはずだったのに、何故か、いつの間にか雪国に……どうやら、アルメニア人というのはユダヤ人や華僑みたいにあちこちの国にコミュニティを作っているらしくって、娘の手掛かりを失ったナザレットさんは北米のアルメニア集落をかたっぱしから探し回ったみたいです。かたっぱしから、といえば、トルコ周辺の孤児院を訪ねまくったりもしましたが、「これって手紙で問い合わせても良かったんじゃあ(この時代の郵便事情はどうなんだろう)……」なんてことも思ってモヤモヤしたり。
ファティ・アキン監督による「愛・死・悪」三部作の「悪」テーマのお話で、民族浄化という大悪と、「羅生門」的な普通の人の悪(正義の心も無いわけじゃないけど自分の都合で悪事もやってしまう、という)。キリスト教徒だったナザレットは神に祈るのをやめ、他者をひどい目に合わせることもありました。
しかし、悪を描くには、その対となるものも描かれなければなりません。彼が生き延び、娘とめぐりあったのは、悪いこともやっちゃう人々の、良心や義侠心のおかげだったのでした。

「オカンの嫁入り」2016/02/16 00:02

2010年、呉美保監督。
冒頭から、温かみと清潔感のある生活の場が映し出される。ジャリンコチエ風、大阪の下町人情。馴染ある電車、犬の散歩に行っていた高台にある公園って大阪城公園?
真夜中に泥酔した母親が、金髪の若い男を連れて帰宅し、翌朝突然、結婚宣言。猛反発の娘……これは、破天荒な母親に娘が振り回される系のハナシか、と思ったら、そうでもない。妙に、娘の言動が子供っぽい。
実は、酷い目に合ったトラウマからニート状態の娘の方が、精神的に母親に頼っている状態。
そこから先は、けっこうテンプレ展開でしたが、でも、いいハナシでした。
大竹しのぶの、娘を愛する気持ちが。宮崎あおい演じる娘さんとの、仲良し母娘っぷりが。
とにかく、温かい。

「細雪」2016/02/21 22:20

谷崎没後50年だった昨年中に読むつもりが、文庫本で上中下巻思ったより長くてお正月休みもナンダカンダで読めなくって時間がかかってしまいました。
鶴子:子だくさんお母さん
幸子:華やかで感情的奥さん
雪子:めんどくさい系内弁慶お嬢さん
妙子:活動的で強か不良娘
の、4姉妹物語で、主に次女の幸子さんの視点で描かれますが、物語の主な内容は雪子(たぶん、この子の名がタイトルの由来なのでしょう)さんが何度もお見合いしては縁談がまとまらないのと、妙子さんのトラブルメーカーっぷりです。
時代は昭和10年代、戦局が徐々に厳しくなっていくのですが、空襲とか、決定的に日本が痛めつけられる辺りには入らず、物語は終わってしまいます。大阪の元・名家のお嬢さんたちの、歌舞伎やら花見やら蛍狩りやら華やかな生活。そういうのを谷崎は描きたかったのですからしょうがないんですが、それでも、この後彼女たちがどういう運命をたどるのか、こんなに長い小説なにに最後のページまで来て、まだまだこの続きが読みたくなってきます。
京阪神至上主義っていうか、その他の土地は結構コテンパンに田舎扱いです(姉妹たちとは水が合わないってことですが)。関西人にはなじみの地名がたっぷり出てくるのが何か楽しいです。
女たちの良くも悪くも「華やか」な生活っぷりの中で、異彩を放つのが神戸の水害描写でした。谷崎自身は大した被害体験ではなかったそうですが、しかし記録文学のように具体的でリアルな描かれかたで、非常に興味深かったです。東日本大震災関連の文学作品も結構ありますが、どっちかというとフワフワふぁんたじっくな書き方で、リアル災害描写なイメージ内から。
それから、幸子さんの亭主が異様に頼りになるのが印象的でした。妻(とその姉妹)を思いやり、あらゆる局面で冷静で的確な判断を下し行動する。彼の甲斐性と頼もしさがあってこそ、谷崎は、何かと面倒事の多い姉妹たちを安定してはしゃがせていられるんだよなあ。

「ピンクとグレー」2016/02/27 16:25

グレーっていうか、思った以上にドス黒かった。原作は現役ジャニーズアイドル作の小説。行定勲監督、菅田将暉出演ってことで観に行きました。
前半は青春モノ、男2女1三人組幼馴染。
一人はイケメン(中島裕翔)だけどあまりに出来すぎなヤツで、でも誕生日祝いを計画してくれたお友達に一言もなく、同居人に一言も相談なく引っ越しを決めちゃったり、さらに一言も相談なく謎の自殺をやらかしたりと、なんかヤな感じ。
もう一人は対照的なダメ男(菅田)。気持ちは分からんでもないけど、ダメすぎて。
女の子(夏帆)は可愛いけど、イケメン君が気になるけどスターになっていって存在が遠くなって、一方でダメ男の方もなんか放っておけなくて、という・・・・
この三人の配置がなんだか定型すぎて、でも男どうしの友情っていうかジャレアイっていうか、こんなものなのかなあって思っていたら。
監督さんの超映画的演出で、クルクルオセロをひっくり返すような作りに素直にビックリ。前半はおおむね原作小説のままでしょうが、後半の「芸能界の歪み編」って、どこら辺までが映画オリジナル展開なんだろうか。
出演役者はみんな良かったけど、中でも、出番はちょこっとなのに、「ラスボス」柳楽優弥の存在感が印象的でした。異様に目に力がある。
最後のオチがいまいちで、意図的に「しょーもな」って感じにしたかったのでしょうが、一気にガクってなってしまう。それに続いて流れるアジカンの「Right Now」の勢いで誤魔化された感じもしないでもない。