「この世界の片隅に」2016/12/04 23:03

間違いなくいい映画、それも「ものすごく良い」、と言えるのですが、でもどこがどうそこまで良いのか、説明しにくいです。
ストーリーは、女の子がお嫁に行く話で、性格キツメのお義姉さんがいたり幼馴染の男の子が絡んだりと、ちょっと「ごちそうさん」っぽい?
淡い色彩の絵が、とてつもなく優しい。その優しい絵に、爆弾やらキノコ雲やらが現れる悲しさ恐ろしさ。
ヒロインのすずさんは、表面的には、天然ドジッコ癒し系設定の女の子なんですが。
でも、そんな単純なところではおさまらない。明るく飄々と生活しているようでいて、実は頭に禿げ出来るようなストレス溜めていたり(結婚って大変だ)。
現実の厳しさの中で翻弄され、消耗して傷ついて、それでも精一杯生活して行こうとする人々の姿、その心の機微の描き方に説得力があって、大きく心揺さぶられます。

そして、観終わった後パンフレット購入時の、そのお値段の高さに別の意味で心揺さぶられました。これが現実感ってやつです。

「みをつくし料理帖」シリーズ2016/12/25 22:43

料理漫画はとんと読まないのですが、この小説は「料理漫画や!」……今、4巻目まで読んでいます。とにかく真っ直ぐなおはなしで読みやすく、気軽に読めるシリーズ。
ヒロインの澪ちゃんが、いろんな困難に遭いながら料理人として成長していく。
こてこてのストーリーながら、人情アリ、身分違いの恋愛アリ、料理勝負アリ、仲良し幼馴染アリ、料理屋経営モノでもアリ。ど真ん中直球の王道とも言えます。巻末のレシピとかお江戸地図がついていたりで、刊行元の読者へのサービス精神がうかがえます。
ヒロインたちが上方出身というのもちょっと面白いです。東西食文化の違い指摘。興奮すると大阪弁の出る澪ちゃん(時代劇なんかでは江戸っ子言葉ばかり聞きますが、本当は多様なお国ことばがあるはずなのです)。そして常日頃から(接客中でも)上方の喋り方を押し通すご寮さんが、大変格好ヨロシイ。
大店の女将をやっていた自負、気品、厳しさ。一本筋の通った、オトナの女や!

「ビリギャル」2016/12/28 00:44

休み前のルンルン気分で、好物のオムライスを食べつつ、昨夜録画していたのを再生。
昨年のヒット映画。その前に話題になった原作本の、流行りの長ったらしいタイトル(関係ないけど、長いタイトルの第一人者は村上春樹だと思う)がいまいち私の趣味じゃなかったのですが。
中身は、非常にまっとうな青春小説でした。話の結末は最初から分かっているし、その過程も、特にひねりがあるわけでもないのですが、それでもちゃんと面白いのです。
登場人物の配置が、(本当にオーソドックスなんだけど)一人一人ちゃんと生きています。ヒロインの頑張りも熱いですが、それ以上に、先生とお母さんのイイ人っぷりが感動的です。
自分のことを良く見て、考えてくれる。情熱を持って接し、アドバイスしてくれる。
そんな存在がそばにいれば、人は頑張れるし、力を出せる。