「アトミック・ボックス」2017/06/10 16:09

作品に合わせてGW期間中に読めたらより旬な感じだったかもしれません。
読めば瀬戸内国際芸術祭に行ってみたくなります。実際わたし第二回の芸術祭に行きましたし。
再読です。新聞連載中も毎日楽しみに読んでいたのですが、連載終了後、国家機密を「保護」し情報漏えいを罰する法案について話題になり、「この作中でそんな法が存在していたらどうなっていただろう!?」なんて思っていました。
要するに、一般人であるヒロインが明らかに「特定秘密」に属する情報(戦後日本の原爆製造計画)を得てさて公表しようかどうしようか、というストーリーです。世間様はもうすでに特定秘密保護のことなんて忘れ去った感じですが、北朝鮮の核開発問題が熱い時期に読み直すのもまたヨシ。
そんな風に言うと小難しい小説みたいですが、基本的には冒険小説です。警察が権力と組織力とシステムで捜査・追跡するのに対して、ヒロインが知恵と勇気と友達の輪で切り抜けるのがとても小気味よいのです。
大きな社会と個々の人間性を切り離すことなく描く、それが池澤夏樹の小説の魅力なのです。