「おちくぼ物語」2017/12/30 23:48

きっかけや経緯は様々あるでしょうが。
相手の人格を無視して強制的に自分の支配下に置こうとする。その自己中心的な非道さに、自分では気づかない。自覚のないまま、暗い歪みはエスカレートしていき……

1979年の文集文庫の新装版。これが出版社の姑息な手段だと分かってはいても、いのまたむつみの表紙絵がカワイイことに異論はない。平安時代のお姫様がこんなお目目パッチリ美少女なわけないことなど大した問題ではなく。
作中でこの時代の生活風俗について色々解説してくれていて(石山詣でとか、結婚の仕組みとか、方違えとか)、なんか田辺聖子による平安・古典文学入門書、を読んでいる気にもなってきます。……ジャパネスクを思い出すなあ。
また、田辺聖子による人間解説(要するに、男ってやつは、女ってやつは、という)もどこか冷めた感じが面白いです。
ストーリーは単純なもので、継母に虐められているお姫様がリッチなイケメンに助けられてめでたしめでたし。
しかし、この姫様の、人は良いけど気弱すぎる部分に、ちょっとイライラしてきます。もっとガツンと言ってやればいいのに、と思う場面がいくつかあって、歯がゆい。
きっぱり自己主張しない女の方が悲劇のヒロインって感じはするのでしょうが。
現実は、素敵な殿方が助けてくれるなんてことは滅多にないのです。
人知れず、餓えて凍えて死んでしまうかもしれないのだ。
殺してしまうかもしれないのだ。