残暑つれづれ、スポーツのアキ2018/09/01 00:50

今年は桜の開花が早かった。梅雨入りも梅雨明けも駆け足で、七月に酷暑、八月に台風連発。このペースで、残暑も速やかに、どうか、ほんとお願いだから。

お願いだから、自民党総裁選を両チームに喩えるの止めてもらいたい。
偉業を成した割に話題性で金足農に遅れをとった感じで、割を食ったようにも見えるけど、それくらい譲って良いでしょう、大阪桐蔭。高校野球ファンから見れば今までもこれからも(U18もドラフトもはじまるし)、ずっと注目され続けるチーム・選手たちなのだから。
……惜しいのは、あまりにも強すぎて、昨夏の失策までさかのぼらないとドラマ性が出てこない点。

野球部じゃないけど、ゴルフ部で賭博……この学校は醜聞によるドラマを提供してくれなくてもいいのに。

名将去る。高嶋監督(72)が智弁和歌山のユニフォームを脱ぐとの報にショック!でもその一方で、あとを継ぐ中谷コーチ(39)に沸く声あり。そうか、彼女たちと同学年。

当事者たちには大問題なのに面白がっているようで申し訳ないけど、大変興味深い女子体操問題。暴力を受けた宮川選手が加害者であるはずのコーチをかばい、選手を守ったはずの偉い人をパワハラ告発。これって裏にどんなドロドロのドラマがあるんだか。
暴力はよくないけど、指導者や練習環境って、人それぞれに相性があるのは確かだから。

代表ユニフォームと公費だからっていう問題?アジア大会でバスケ選手の不祥事、大いに違和感。会社員が出張先でハメ外してって話は昔からよく聞くんだけど、それと同じノリをスポーツ選手もやらかしたってことではない?……プライベートの旅行でだって、買春はダメでしょう。
それに、彼らは現地の司法に出頭しなくって良いのだろうか。キレイごとでは治まらないのかもしれないけど。違法行為をした者をしらんふりして逃亡させてウヤムヤにしちゃうのが本当に日本の名誉を守ることになるのか、それがスポーツマンシップに則った行為なのか。これはスポーツの問題じゃなくって、日本人のモラルの問題。

臭いモノに蓋して、どうなるか。前のアジア大会でカメラ盗んだ水泳選手がいたけど、その後どうなったんだろう。状況的にあまりにも不自然な事件なのであれは何かの精神疾患(盗癖っていうのかな。盗まずにはいられない病)なんじゃないかと思っていたのだけど、日水連は選手からちゃんと話を聞いたのか、カウンセラーを受けさせる等したのか。もし病と認定されたのなら、それはちゃんと公表して社会問題として議論されるべきなんだけど。その後どうなったんだろう……

社会問題の解決とか、困っている人を助けるとか、そういうボランティアではない。巨大資本が動くイベントなんだから、日当出して人雇えばいいのに、オリンピック委員会やスポンサー企業。

「ペンギン・ハイウェイ」2018/09/04 00:47

もう夏も終わりなんだけど夏映画。森見登美彦原作のSF(すこし、ふしぎ)アニメ。
主人公のアオヤマ君は怒らない。怒りそうになるとおっパイのことを考える。
一般的な小学生っぽいとは言えない彼は、大人にとっての(というか、おそらくは原作者にとっての)理想小学生。努力家で理屈っぽく、一日一日が立派な大人になることに繋がっていくことを意識していて、つまりは希望の未来を見据えている。とても多忙、と言うけどそれは塾とかお稽古事じゃなくて、自分の興味ある分野を研究・考察することに向けられる。
町に出現したペンギンとか、チェスの腕前を上げるとか、お姉さんのおっぱいとか、世界の果てとか。アオヤマ君はいろんな謎に関心を持つけど、ネットで物事を調べることが無い。デスクには紙の図鑑があり、現物に対し観察・実験を行い、手書きでノートにまとめる。そしてたいそう理知的なお父さん(この人もある意味理想的な父親像)とちょっぴり哲学的なお話をしてヒントを得る。
私から見れば、可愛くもあもり生意気でもあり頼もしくもあるアオヤマ君。同年代の小学生から見たら、どう思うのだろう。……原作小説は別に子供向けじゃないから、子供ウケする必要はないのかも。
ストーリーよりも、アオヤマ君の特異なキャラクターと彼の夏の日々に共感できるか否かが重要な気がしました。

「おこしやす、ちとせちゃん」2018/09/05 00:17

漫画でも小説でも、京都モノはごまんとある中で。
ちとせちゃんはコウテイペンギンのヒナ。ふわふわもこもこの彼女が京都のあちこちで楽しく遊んでいるっていう、ただそれだけの漫画だ。
京都案内モノ、と思ったら薄く感じる。そこどこ?って思う回もある。
だけど、ぶっちゃけ京都でなくてもイイと思う。愛くるしいちとせちゃんと共に行くならば、横浜だろうがエジプトだろうが素敵に違いないのである。
しかも。
ぺんぎんさんは、うさぎさんとお月見したり、犬さんと凧揚げしたり、かえるさんと雨宿りしたりしているのだ。
ただただ、かわいい、癒される。

第13回大阪クラシック、雨天に歌えば2018/09/10 00:15

雨傘持って、2018大阪クラシックへ。

第1公演 11:45~
会場の、大阪市中央公会堂100周年を記念して。
生誕100周年のバーンスタイン。彼の最期の言葉は「モーツァルト」だったそうで(大植英次談。お迎えがモーツァルトなら音楽家冥利ですね)。
オープニングは「キャンディード」序曲。数年前には毎週のように「題名のない音楽会」で聴いていた、あれほど強烈なフォルテじゃなくて、まるで違う感じ。
3曲目の「キャンディード」組曲は、明るく楽しい。
没後100周年のドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、なるほど「お昼寝」を「午睡」と格好つけて言うような、なんかフランスっぽい優雅さ。日曜の午後にふさわしい曲。大植さんお気に入りの曲というのも納得の美しい演奏でした。
なのに。この曲の最中に、カメラを入れていたJ:COMさんが、やらかしてしまったよ……

第4公演 14:00~ 
日本生命本店東館はまだ新しい建物で、お手洗いの洗面台がモダンなこと。演奏者はスクリーンに大映しされ、後ろの方の方でもバッチリ見える親切さ。
メンデルスゾーン 弦楽五重奏曲 第2番 変ロ長調
熱演。真ん中の第2、3楽章は緩やかで眠たげ、第1、4楽章はアレグロで疾走感。

第8公演 16:30~
中之島ダイビル内の丸福珈琲でオヤツ(ホットケーキ)を頂き英気を養って。
アイアランド(英)って誰?という感じの、マイナーな六重奏曲。二階からの立ち見鑑賞で、全然疲れを感じなかった。
第4公演の編成にヴィオラ-1してクラリネットとホルンを入れた、この組み合わせも珍しく思ったけど、弦に管楽器がふたつ加わるとずいぶんと音に厚みが出るなあ。三階吹き抜けの大きな空間を心地よく満たす。知らない作曲家の知らない曲を思わぬノリノリで聴けると、得した気分です。
クラリネットの金井信行さん、演奏後にお辞儀だけじゃなくて手を振ってくれるのいいなあ。こちらも「ありがとう」って手を振り返せる。
ホルンの高橋将純さんはここ数年印象的な音を聞かせてもらっていましたが、力強いけど押し付けがましいとこがない、優しい音色に耳を傾けずにいられない。

第10公演 18:00~
雨が降るけど、中之島からもう少し足を伸ばし、初会場のヒルトンプラザイーストへ。商業ビルは日曜もざわついているから大丈夫かな?と思ったけど、ホテルってこういう演奏会もしばしば催されるのでしょう。立派なステージにピアノが用意され、その後ろに大きなスピーカー。
プロコフィエフ  チェロソナタ ハ長調
庄司さんによる演奏前解説に「ソナタとは起承転結」とあったように、なんだか物語性を感じさせせる曲でした。中桐さんのピアノも軽快で楽しい。
もう一曲は、ラフマニノフの有名曲・ヴォカリーズ。

第13回大阪クラシック、シネマ2018/09/14 00:43

第47公演 19:30~  
ザ・フェニックスホールの、近藤さんのチェロ・リサイタルだ!料金千円で一時間たっぷり美しい音楽と楽しいお喋りを満喫できるのだ!しかも、ピアノの河合珠江さんのセクシードレス付!
一曲目は宮川彬「風のオリヴァストロ」……調べて見たら、イタリア語でオリーブ色のって意味だそうです。亡き人を偲びオリーブ色の風が吹くという曲。
腕の血腫のためしばらく弾けていなかったということ。そのためかどうか、今年は「アンコール特集(笑)」。常にはアンコールで演奏することの多い小曲。リストの「愛の夢」やラフマニノフ2番のアダージョ部分をチェロアレンジ。
映画音楽は最近より昔のもののほうが良かった、と。「ある愛の歌」「シンドラーのリスト」「ニュー・シネマ・パラダイス」……名作と言われてるけど私、どれも、観たことない…
しかし、この「アンコール特集(笑)」のメインは、プログラム外の正真正銘のアンコール曲、ピアソラ「アヴェ・マリア」。
ただでさえ、近藤さんのピアソラは鉄板なのに。やさしいメロディに合わせて、ステージ背後の幕が、ゆっくり上がっていく。
暗いホールに、一面ガラスの向こうの夜の光が、まるでスクリーンに映し出されたかのように現れる。それは、決して百万ドルの夜景とか、そんな豪華なモノではない。梅田方面から南下してくるヘッドライトの川と、その端っこの歩道橋を登る人影。
……大ヒットした「君の名は。」で、何気ない街の風景を得も言われぬ美しさで描くってのをやったのを思い出す。人々の喜怒哀楽山あり谷ありな日常を、慈しむ気持ちにさせてくれる。
なんてことない夜の一場面を感動的に演出してくれた、演奏とフェニックスホールにブラボー。

2018大阪クラシック、finale2018/09/16 14:14

祭りの最終日。
第69公演 11:00~
おおくらお馴染みの大阪市役所正面玄関ホールは二階回廊のシャレた感じやステンドグラスが素敵な会場。なのに、どっちを向いても2025万博の幟や横断幕がてんこもりで、台無しすぎる。
……吉村市長、第1回公演で大植さんとの漫才のときに台風被害復興や貧困家庭対策やこども図書館の寄付呼びかけとか、アピールありましたが、万博の予算をそちらに使ってはいかがでしょうか……
そんな、なんかテンション上がらない中でクラーマーのピアノ五重奏の鑑賞ですが。
そういうイベントなのは分かっているけれど、幼児があーうーと自己表現を始めて止まらない。特に第2楽章のしみじみアダージョがまるで集中して聴けない。……演奏者の方々は、こういうの、大丈夫なのか。
アンコールはピアノ五重奏のメジャー、シューベルトの鱒。

第73公演 13:00~
京阪神御堂筋ビルでは立ち見鑑賞でしたが、こちらの方がちゃんと聴ける。ベビーカーの親子の姿もありましたが、こどもが声出すとすぐに連れ出す配慮をしていただけると気持ちよいものです。
ヴァイオリンの二重奏で、ルクレール、シュポア、バルトークの小作品。バルトークさんは東欧の民族音楽収集をやってらしたそうで。44のヴァイオリン二重奏曲No.42に(Arabian song)とあり、クラシック音楽でエキゾチックなムード。
こちらもメインがマイナー曲で、アンコールをメジャーに。グリーンスリーブス、名曲。

第76公演 14:30~
ピアノ五重奏曲の聴き比べができる、と楽しみにしていたのです。
モーツァルト/ピアノと管楽のための五重奏曲。
管弦楽のための、はよく見るけど、これ弦ナシ。オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン。珍しい編成。
しかしやはり、子供。弦に比べれば音の強い曲、それでもやっぱり気になる。大阪市役所正面玄関ホールの子供席は、真ん前ではなくて、出入り口付近に設置するべき。やっと連れ出してくれたのは第2楽章の半ばくらい。
モーツァルトらしい楽しげな曲で、それぞれの楽器の見せ場もあって。

第79公演 16:30~
この日は大阪市役所と京阪神御堂筋ビルを2往復スケジュール。御堂筋に面したビルの会場は、たまたま歩いていた人がふらりと入ってこられて「街にあふれる音楽」という大阪クラシックの副題を体現しています。会場は大入り。
そして、演奏が開始され予想外なバッハの地味さに立ち去るのだった。
無伴奏チェロ第2番ニ短調。
滅多にないファゴットの独奏、楽しかったけどね。

第80公演 18:00~
そして再びバッハ、三度の大阪市役所。
無伴奏パルティータ イ短調
無伴奏チェロ第4番変ホ長調
野津さんのフルートは水曜にモーツァルトの四重奏とハープとの二重奏も聴いて、フィナーレ手前のバッハ演奏も毎年のことですが。
この演奏の気合の入り様。
最終公演のリハーサルの出来の良さを想像させる。

第81公演 19:15~
フェスティバルホールにて。
チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調
これってこんなに素敵な曲だったかしら。音の強弱、高低、テンポのメリハリで引き込まれてしまう。抑揚っていうのか。
短いフレーズを順繰りに別の楽器で演奏するのも好き。第3楽章のピチカートの海にぞくぞくする。
大満足。

番外編、レトロ建築2018/09/20 01:13

四条河原町にほど近い、フランソア。レトロなカフェ、初夏に行った築地と同様、古めかしい飴色が基調でBGMはクラシックがかかっている。けど、全然聴こえない。観光客なのか地元の人なのか、とにかくザワザワしている。オヤツの時間には少し早めだったのに、ケーキメニューのほとんどが売り切れと言われるし。
築地は日曜でも静かだったのになあ。お客さん大入りは商売繁盛で結構なんだけど、なんというか、雰囲気を味わいたかったのに落ち着かない。
実を言うと最初は長楽館を見に行くつもりで円山公園へ向かったのですが、事前に調べておくのを怠ってしまった、メンテのため休館、仕方ないから外回りだけ見物して。……京阪の情報誌持参でカフェの代金一割引きだったのに……
まんまとフリーペーパーの「レトロ建築特集」に踊らされている感じなのですが、もともと古めかしい建物は好きなのです。
先週クラシックを聴きに大阪入りして耳の保養をしたわけですが、意識的に、目の保養の方も。……台風でトコロドコロ荒れた感じとか、万博招致のダサいモニュメントで興が削がれるのも嫌なモノ。大阪クラシック番外編、オフィス街レトロ建築。
土佐堀川沿いにでーんと重々しい存在感を見せつけるけどなかなか内部を見ることは無い、三井住友銀行大阪本店ビル。昔自然光、今LEDで照らされる天井ステンドグラスの下でフルートとハープの演奏。
中之島図書館は、いつも横を通るばかりで、今回公演の合間に初めて内部に。イイ感じに時代がかって楽しいのに、誰もいない展示スペースとか、もったいない。もっと有効利用できそうなものなのに。図書館なのに文房具屋やレストランがあって、演奏前に欧風サンドイッチとグラスワインで軽く腹ごしらえして。
前から気になっていた芝川ビルは、最終日公演の京阪神ビル近くで。あれは洋風ではなく古代南米風! 外観も内部も個性的、でもお手洗いはちゃんと新しかった。地下のカフェ・バーでお昼ご飯。一階のチョコレート屋さんでもお買い物。
今年もオープニング公演から、大阪クラシックではお馴染みの会場。最終公演のあと、大阪市中央公会堂のレストランで余韻に浸る。オムライスセット(ハーフサイズ¥3000)、前菜が葉物と塩味のハム、タコと野菜の酢の物(マリネ?)、カボチャの冷スープに浮かんだチーズ、牛感たっぷりのソースで卵でもライスでもなく牛肉料理食べた気分の豪華オムライス。プログラム提示でサービスのカクテル。
行って来た建物っていうか、食事した場所の列挙になっている……
大阪の風景と言えば道頓堀と通天閣と大阪城あたりが定番になっているけど、オシャレな部分もスポット当たってほしいな。

「皇帝ペンギン ただいま」2018/09/21 23:31

どっちかというと、「おかえり」って感じです。
前作ほどの感動はない、というネットの感想がそのまま当てはまる。
05年に語られた皇帝ペンギンの過酷な子育てについて、構成を変えてお届けしましたっていう、二匹目のドジョウ。
新しく、美しい水中シーンと、成長した雛たちの「初めての海」が追加されたのは嬉しい。カメラの性能向上はすばらしい、でも羽毛のアップとかは、そんなにじっくり見せてくれなくてもなあ。
でもまあ、ペンギンさんの愛くるしいお姿をたくさん見られたからそれでヨシ、とも思う。それだけで癒されるのもまたこの映画の真理。
愛らしくユーモラスなペンギンさんと、餓え寒さ餌場まで100キロをあのヨチヨチ歩きで往復する厳しさ。そのギャップに萌える。
パンフレットで気候変動による南極の氷とペンギンに対する影響について触れられていましたが、それ映画本編で映してくれたらよかったのに。変な形した氷原だなあとは思ったけど、それだけじゃ分からないよ。

「おらおらでひとりいぐも」2018/09/24 22:57

主人公の名が桃子さん、だからじゃないけど。
この小説に絵を付けるとしたら、先日お亡くなりになった、さくらももこの画が良いなあ。
若竹千佐子作、2017年下半期芥川賞受賞作。けっこう売れているらしいけど、20代くらいの若い人の感想を知りたくなる。
己の内面の複数の声を、腸の絨毛突起のイメージでお届けする。内容は全編内省的自己ツッコミでありながら、ユーモラスでシュールな画像的に書かれている。
ただし、主人公は小学生女子ではなく七十代老女、テーマは人生とか愛とか死とか。
絨毛突起たちによって己の母語たる東北言葉を復活させた桃子さん。なかなかゴチャゴチャと理屈っぽいお人である。行動はけっこう突発的なのに。七十代の現在の生活から、過去の回想へと移り、その意味を(東北弁の自己分析によって)見出していく。
私には結婚も子育ても田舎からの上京も経験ないけど、もう少し齢を重ねたら、こうして己の意味を思索してちょっぴり何かを悟るようになるのかなあ

「百年泥」2018/09/30 16:43

百年に一度の大洪水に見舞われて、でも全然クヨクヨしていなくてカラリとしている。そもそも、南インドで素人日本語教師をやる羽目になったのも、男に騙されて借金まみれになったからなのに、シニカルなユーモアを交えて語る。
著者略歴見れば、石井遊佳さん大阪府枚方市生まれ。……関西人かあ、mental of OOSKA-OBACHANだと思えばなんか納得。ヒロインは日本語教室で「日本ではマクドナルドのことを<マクド>と言います」と偏った知識を教えちゃう。
同時に芥川賞を受賞した「おらおらでひとりいぐも」と、形は似ている。ヒロインの現在の状況(どちらも一人暮らしで、己について他者に多くを語らないタイプ)を述べつつ、その中から、埋もれていた過去の事実が浮かび上がってくる。「おらおらで」ではそれが東北弁の内省から。「百年泥」では百年ぶりに川底から上がってきた泥の中から。
現在と過去、我と他、リアルと奇想が入り混じる。しかし「大阪人マインドだから、しかもインドだから」という謎の説得力によってナチュラルに受け入られる。
副主人公(と、言っていいと思う)のインド人生徒のエピソードがなんだかキレイすぎるのですが。でも、彼のツンデレっぷりというか授業にかこつけた遠回しな自己アピールは、可愛いと言えなくもない。