「私を離さないで」2019/01/05 11:48

皇后陛下ご愛読の報道でいきなり英国のユーモア・ミステリ小説重版!というのにびっくりした昨年。たいしたインフルエンサーっていうか、ロイヤリティの力凄いや。

一昨年の「いきなり重版決定!」といえば、日系英国人ノーベル文学賞受賞効果によるものでした。ビッグタイトルの影響力。
一度読んでみたいと思いながらも未読なカズオ・イシグロ。まずは2010年の映画版から。Never Let Me Go
「いつか馬を5頭飼うの」少女の夢は叶わない。なぜならその学校の生徒たちは皆、大人になったら誰かに臓器を提供して「終了」だから。
ストーリー設定がSF的なのに、時代設定は近未来ではなく90年代半ばで、むしろレトロ感のある舞台なのがまず印象的で。
外界から物理的にも情報的にも隔離され、校長先生の言葉と不確かな噂話に包まれ、体の健康維持に努める。そんな生活の中でも、イジメがあり、友情があり、三角関係も生まれ……。臓器提供者たちの隔離が医療施設ではなく学校で行われるのは、それがせめてもの、彼らに対する「人権尊重」だからだった。
提供者たちは哀しい運命に牙を剥かず、ほのかな希望にすがり、そして「終了」。
最後の美しい映像と音楽とヒロインの独白が、しん、と胸に刺さる。