「眠る村」2019/03/17 23:06

ナレーターというより、「役者」な仲代達矢。この情感の込め方は賛否分かれるかもしれない。
事実に基づく。という作品には興味を覚える方だけれど、ちゃんとしたノンフィクション小説やドキュメンタリー映画はなかなか手が出ない。やっぱり固くて真面目すぎて、面白みがない気がしてしまうのだろう。
東海テレビドキュメンタリー劇場第11弾。いわゆる「名張毒ぶどう酒事件」は、これまでも何度か取り上げられてきて、今回がおそらくその集大成っていうか完結版っていうか。
肺炎で亡くなった奥西死刑囚の無実を示す手がかりは、出てこない。ただ、彼が犯人であるという物証や証言や自白の信ぴょう性の無さだけが、次々と提示される。事件から半世紀以上たち、集大成にしてこのスッキリしない感じである。
亡くなった死刑囚の妹さん88才が、曲がった腰をさらに折って頭を下げ、再審請求は今でも続いているのですが。
待っている。この妹さんが亡くなるのを。本当に終わってしまうことを。待っている人たちがいる。
名張、よりも、葛尾という地名の方が頻繁に出てくる。小さな集落で起こった大きな事件は、ミス・マープルも金田一も登場することなく終わることを待たれている。
もしも本当に、奥西死刑囚が無実であったならば、警察・司法が困る。権威的に。葛尾の人々も困る。村の中の誰かが真犯人だということは負担なのだ。心理的に。
終わらせまいとする人たちと。
眠らせたまま終わってほしい人たち。