「密やかな結晶」2020/04/20 22:48

そういえば、この作者はアンネ・フランクのファンだったなあ。嵐のような外界から身を隠す、ひっそりとした空間で息を殺して、支援者とのみ交流する。その閉塞感を、苦痛と言うよりもむしろある種の快感として描く。
人は案外、恐怖も不自由さも受け入れて、楽しんでしまうのだろう。
小川洋子の94年の作品、ブッカー賞の候補、なのでまだ受賞したわけじゃないのだけど、最近では珍しく明るいニュースだと思って、学生の時以来の再読(内容はすっかり忘れていた)。
おそらく日本と思われる島では、次々と「消滅」が起こる。帽子や、カレンダーや、香水や、ラムネや、小説や、小鳥や、左足など。それは物理的であり自然現象でもあり、人々の中から概念ごと失われてしまう。しかし、消滅してしまったものを捨てずに覚えている人々もいて、それを狩り立てる秘密警察が存在している。……なんとなくだけど、英国知識人の好みそうな設定だ。
この辛気臭い小説を読んで改めて思ったのが、私は昨今はやりの「不要不急」という言葉が嫌いであるということだ。
百歩譲って不急であることは認めても、簡単に不要って言うな!図書館も高校野球もコンサートも映画も飲み屋も不要なんかじゃないぞ!ちゃんと「お急ぎの要件でなければ遠慮してね」って言ってよ!

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