「朝が来る」2020/12/19 00:14

不妊治療への金銭補助増加が現政権の目玉政策だそうですが、どうも、ピンとこない。授かりもの、巡り合わせ、という認識があるからだ。妊活、と言われればあまり気にならない。治療と言ってしまうとまるで病人みたい。
それよりは、授からない人と育てられない人を結びつける養子縁組制度を拡充させる方が合理的に思う。そして実際に、特別養子縁組成立件数は増加傾向にあるそうだけど。
出産というプロセスの圧倒的なインパクトは、猪口才な合理性など超越してしまうのか。

多用される役者さんの顏のアップに、存在感たっぷりの自然描写。
五輪映画撮り損ない記念(来年ワンチャンあるかな)に、河瀬直美作品。この監督さんは国際的には評価高い(だから五輪や万博なんかで声がかかってくる)けど、その知名度の割に、国内ではあまり多くは鑑賞されていない。この映画も、原作は人気作家の小説で、実力派の役者さんをそろえてきたのに。
二部構成。ポスターだと永作博美が主人公みたいだけど、前半はなんか不妊治療と特別養子縁組制度の啓発っぽさが強くて。後半の蒔田彩珠のやりきれない感じの方が印象深い。この人は今年観た「星の子」でも複雑なモノを抱えてやりきれない感じを好演。恋人と楽しく自転車二人乗りの光景に「なんてベタな」と思ったけど、それが数年後には生活のための新聞配達で自転車を漕ぐ。子供を産んでも育てられない側の方が苦境に立っているのは、当然ではある。
この映画では、子供の小学校入学までは「もう一人の親」の存在を知らせるお約束になっている。子供の知る権利って、養子でも不妊治療でも、大切。
子供は子供自身のために生まれてくる。
だけどやっぱり、親のためでもある。