ちょっと、高校野球の話、異例2021/09/04 22:23

秋風が吹き、虫の声が宵闇を震わせる。新米を炊く。
季節の移り変わりを思いつつ、夏の大会を振り返り。

智弁和歌山高校、優勝おめでとうございます。中谷監督(学生時代の後輩、Aちゃんと同級だったという)は選手としても優勝、母校に戻り監督としても頂点に立ち、監督就任数年で高校野球界のてっぺんを獲ったわけです。
しかしながらこの人は、プロ野球選手としては(確か、堂々のドラ1だったはず)目覚ましい活躍だったとは言い難く、苦しい思いをすることも、少なくはなかったでしょう。
そんな年月を経て、栄冠は君に輝く。

と、祝福する気持ちがある一方で、本当はこの智弁対決では、奈良・智弁に初優勝してもらいたかった。和歌智の方はスケジュールや対戦相手コロナ感染のために奈良智よりも二つも試合数が少ない。さらに、決勝までに智弁学園は横浜や明徳義塾という優勝経験のある強豪2チームと対戦しているのです。消耗度が違う。誰のせいでもないんだけど、こういうのを「運も実力の内」って言うのでしょう。

異例づくめだった103回大会で、驚きの発表がありました。試合の順延がさらに続けば、甲子園で昼間は高校野球、夜は阪神戦をやる。それ、できるんや!!天候のため予定が進まないと「阪神が戻るまでになんとか」と言われ続けていたので。大人の事情でできないものと思ってました。
でもまあ、タイガースだって「阪神戦やるから高校野球の続きは別球場でやってね」なんて、公式発表できるわけないよなあ。

そして、計画発表された時から「ナイス提案」と評価されていた、女子高校野球初の甲子園ゲーム!
もともと、選手休養日で甲子園が開いてしまう日に女子の決勝戦をやるはずでした。天候のために予定が狂い大変だったとは思いますが、やって良かったね。TV放送しなかったのはもったいない。自分もスポーツニュースでしか見ていないけど、女子高生たちの笑顔の輝いていること、眩しい、キラキラだ!
甲子園の野球少年たちが、時に苦しげに表情をゆがめ、いろいろ気負いすぎてしまっているのが気になっていました。
野球、楽しんで。

「ポアロとグリーンショアの阿房宮」2021/09/08 22:19

2014年に発表された、アガサ・クリスティーの新作。
未発表の中編作品(別の長編作品の原型)によって、死後何十年経ってもお孫さんに一稼ぎさせてあげるなんてねえ。薄い文庫本に、解説文がたっぷり。
阿房宮(folly)って聞きなれない単語ですが、お庭の中の四阿みたいなもんかな?グリーンショアというのは実際にクリスティーが所有していた田舎の邸宅がモデルだそうです。さらに著者の分身と思われる準レギュラー・オリヴァ夫人(リンゴ好き推理作家)も登場し、「なんか分かんないけど事件が起こりそう」っていう曖昧な理由でロンドンから名探偵を呼び出します。まあ、金持田舎オヤジに若い美貌の奥さんって設定だけで、事件起こりそう。
英国の田舎は美しく、闇が渦巻く。戦後の混乱があったとはいえ、闇がさらに闇を生み続ける、おなじみの構図。

「スマホ脳」2021/09/12 11:28

19年に世界的に話題になり、日本では昨年秋に刊行された(新潮文庫882)デジタル世界への警告。
自分もそろそろスマホに変えなければと思うのだけど(緊急連絡先としては、ガラケーで十分なんだけど)、怖くなってくるなー。これ以上注意散漫なヤツになってしまったらどうしよう……。
著者のアンデシュ・ハンセン氏はスウェーデン人、精神科医だそうですが、人類学者のように思えてくる。スマホが脳に与える影響を人類進化に絡めて説明してくるので。生存するために進化してきた脳からの命令があり、それに従うことで快楽を得るようになっているので、必ずしも理性によってそれに逆らうことができない……。
そのあたりはちょっとコジツケっぽく感じることもあるのですが、スマホが現代社会を生きる人々(とくに子供・若年者)に悪影響を及ぼしていることは、様々な実験結果により証明されていると思って間違いないようです。……新コロでリモート授業を行う小学校もあるようですが、それで十分な学習効果が得られるのは一握りの元々優秀なお子さんだけなんだろうか……
人は何らかの形で刺激を求める性質があり、スマホは多種多様な刺激に満ちている。
それに振り回されずに精神を健全に保つには、まず運動、それから良質な睡眠。気候が良くなってくるし、朝はバスを使わず歩こうかなあ。

大阪クラシック2021 緊急事態宣言2021/09/19 12:08

緊急事態宣言も延長されたし宣伝もほとんどなかったし、今年は無いんじゃないかと思っていましたが、ちゃんと開催されていました。
無料オンライン配信は来月末まで公開されているのでおいおい聴くとして。
しかし、ここ一年くらいでオンライン遠隔公演が増えてきて、改めて言われるようになったのが「やっぱりリアルな鑑賞体験を」。便利で低コスト、でもやはり何かが違うのだ。
今年は最終公演のみ聴きに行く。ブラームスの第1番。最高に盛り上がるフィナーレ。…なのに指揮者が手を下すより一瞬早く拍手したセッカチさんが……余韻がああ……
アンコールはエルガーのエニグマ変奏曲から「ニムロッド」
そして毎度おなじみ外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」より八木節。

「ドライブ・マイ・カー」2021/09/23 22:38

原作は、来月立派な文学館がオープンするという村上春樹。しかし脚本には表題作以外の短編のエピソードや、劇中劇のチェーホフのテキスト引用もたっぷり、いろんな要素を盛り込んで、カンヌ映画祭脚本賞。
濱口竜介監督は、昨年の「スパイの妻」の脚本も良かった。色々詰め込んで、それでいて消化不良にならずにキチンとした物語になっている。今回も、象徴的な言葉をふんだんに散りばめ、核心を突くところはそのまんまセリフで説明されていて、イマジネーションを膨らませたうえで、ちゃんと分かり易い。今風っていうか、今後もこういうスタイル流行ると思う。
 西島秀俊演じる主人公は演出家、それも多言語演劇。そういう演劇手法があるっていうのは聞いたことはあったけど、日本語や英語やハングルがチャンポンで、不思議な面白さがある。役者が台詞に感情を込めるのではなく、台詞が役者の感情を引き出す。って解釈でいいのだろうか?
言語としての言葉と、物語としての言葉、その相互作用で人々が結びつく。

堂本印象 生誕130年2021/09/26 21:58

京都駅からバスで40分ほど、ちょっと遠いけど、以前から気になっていた府立美術館。もともと印象自身が実家のすぐ前に建てた私設ミュージアムで、外観内装の意匠がヘンテコリンでオモシロ楽しく、いつまで居ても飽きない。
企画展は今週末まで、と、思っていたら11月23日まで延長。聞けば、コロナのために次の企画が難しくなって、と率直な返答が。どこの施設も大変なのでしょう。緊急事態宣言が解除されてから観に行きたいっていうお客さんもいるかもしれませんしね。
作品ジャンルが多様な堂本印象(五月に自分が見たのは神社の鳥居デザインだった)ですが、今回は絵画作品を中心に。人気投票BEST10が発表されていて、ポスターになっていた「木華開耶媛」は第3位。しかしポスター外の部分、女神の素足の色っぽさとか春の小川の華やかな景色がセットじゃないと全然違って見える、と思ってこれは絵葉書購入。もう一枚買ったのは、モノクロームで描かれた「夕顔」(同10位)。
印象は抽象画のイメージが強かったけど、動植物の描き方があたたかく可愛らしくて(同2位は春の野の兎だった)ほのぼのします。
抽象画はやはり難しいけど、「交響」(同4位)はなるほど、スタイリッシュ交わり響き合うって感じでした。
企画展後編も、できれば見に行きたい。