お茶と宇治のまち歴史公園2021/10/02 22:49

交通各社、どこも減収で大変なのでしょう。
京阪のダイヤ変更で、以前より三分早く自宅を出なければならない。本数も減って、でも収益を考えたら、しかたのないことなのだと納得せざるを得ない。

そんな京阪宇治駅のすぐそばにオープンした施設。8月半ばに開館予定が、緊急事態宣言のために即日休館、10月になってようやくお客さんを迎え入れることができました。
しかし、開館前から施設周辺の芝生や遊歩道は気持ちの良いキレイな空間になっていて、親御さんが小さいお子さんを遊ばせたり、お弁当を広げたり、お散歩したり、のどかなくつろぎの場となっていました。
施設内のミュージアムにはあんまり興味ありませんが、昔の堤防(太閤堤)解説は面白く思いました。……アフガニスタンで亡くなられたお医者さんの著作を読んで以来、治水や土木工事を見る目が変わった感じです。
美しい広場や、ピカピカの新しい集会室をいかに活用できるか。魅力的なイベントを開催して人を集め、何よりも地元の人たちに好意を持ってもらえる場所にならないと作ったかいがありません。
オープン記念に来館者全員に配布の団扇は、プラスチックじゃない。竹の骨に抗菌抗ウイルス美濃和紙使用。なんだかんだ言って宇治市はおカネあるなあ。

「華氏451℃」2021/10/03 21:45

FAHRENHEIT 451
それは、本が自然発火する温度。1953年レイ・ブラッドベリ作の幻想的SF小説は、文章がフワフワと詩的で非常に読みづらかったのですが、「色と光と駄弁の放送局」っていう表現はちょっと笑ってしまった。
愚にもつかないTVとラジオが人々を取り巻く世界では、書物の所持が禁じられている。主人公・モンタークは焚書官でありながら、そんな社会に疑問を抱き、徐々に言動が不穏で支離滅裂になっていく。だいぶ病んでいるとしか思えない。
面白いのは、彼の上司が、本を焼く仕事しているくせにたいそうな読書家なこと。この人が理路整然と、本=知性を得ることの有害性を説いてくる。そんなものは人々を苦しめるばかりだという、これって反知性主義ってやつでしょうか。
楽しく中身のないTVに夢中になっていても、主人公の奥さんは大量の睡眠薬を飲む。
そして戦火に呑まれる。
破壊する火から、温める火へ。
それだけで、本には有益性があるはず。

「先生、私の隣に座っていただけませんか?」2021/10/17 22:09

ライトノベルみたいな台詞そのまんまタイトル。と、思ったら、つたやの企画コンテストで入賞した作品なのだそうで。
前に観た「ドライブ・マイ・カー」に続く、カルチャー系不倫モノにして、車映画。しかし、こちらはコミカルな調子で。
黒木華演じる妻が不倫漫画を描き始め、柄本祐演じる夫は焦る。妻が本当に教習所の先生とデキているんじゃないか、と。
自分も余所で不倫しているくせに、妻が不倫しているのは面白くない。そして、どう考えてもバレバレなのに、シラヲ切ってしまう。どこまでも情けない、しかし、どこかにこんな夫、いてそう。
妻の、愛と憎しみの入り混じった、というか、両極端を背中合わせにしたようなキャラクターは、良く考えるとけっこう怖い。突き詰めるタイプ(要するに、創作家タイプ)ってエキセントリックに描かれますね。終盤はヒネリすぎな気もしましたが。
漫画(下書き)と実写を組み合わせた画面が面白い。

「女のいない男たち」2021/10/23 12:13

先月観た映画の原作本。原作っていうか、原案っていうほうが近い気がします。多言語とか手話とか特徴的な要素は、脚本オリジナルだった。それでいて、元ネタ小説のニュアンスはどこか、残っている気がします。物語を生きる、演じる、その中からの生まれ出る本質的な言葉。
まあ、そもそも村上春樹作品は、解釈の幅が広いものですからねえ。
巻末の描き下ろし作品がこの短編集の表題作であり一番短かったので、それを先に読んだのですが、これが、独特のメタファーに彩られて具体性がとぼしく、つまり私の苦手な読みにくさなのです。
ところが、他の5編は、普通すぎるくらい普通に明確な物語。どうやら、私は読む順番を間違えたようです。女に去られた5人の男たちが抱える、空虚感。それを5つ積み重ねた後、抽象的な世界観へ入っていくべきでした。