「孤独な夜のココア」2021/11/06 14:49

こないだ読んだ男たちの恋愛小説集の中に、一遍だけ関西弁でしゃべる人物が登場しました。村上春樹の小説はセリフが芝居掛かっていて(オシャレ?)現実感が薄くなるイメージなのですが、コテコテ関西弁になるとナチュラルでびっくり。
次は、全編関西が舞台の、女たちの恋愛小説集。新潮文庫、綿矢りさが巻末解説ですが、時代は昭和。 十二編の大半が、二十代後半の女たちの失恋話。
たとえば、「怒りんぼ」では、すぐにカッとなる性質のヒロインが、自分を裏切って他の女のもとへ行く男のことを、怒ることができない。穏やかな性質の男は、自分が悪いのだから怒ってほしい、と言うのだけれど。カッとなって怒れた日は、悲しみを知らない日だった……
村上春樹作品が孤独と空虚感を描くのに対し、田辺聖子の描く恋心は、マシュマロのように軽く柔らかく、甘い。たとえ結ばれず、別れることになったとしても、想う相手へ向ける彼女たちの眼差しは」、可愛らしい幸福感を帯びる。
不安も後悔も苛立ちも、このトキメキがあってこそ。