「英雄の証明」2022/05/08 16:22

ラヒムは負債を返済できずに服役中の身でありながら、拾った金貨を正直に落とし主に返しました。
たったそれだけの事実から、善行をもてはやされたり自作自演を疑われたり、状況の変化に振り回されるという、イラン・フランス映画。イラン人気質というか、人々が情に厚く名誉を重んじる傾向がおおいに感じられます。
昨年カンヌでグランプリ獲っているし、けっこう期待していたのですが、あまりに地味すぎて眠くなる(頭痛薬のせいかもしれません)。冒頭の巨大な遺跡は古代ペルシア帝国の末裔としての誇り高さを思わせますが、主人公は良くも悪くも小市民的な男です。
アスガー・ファルハディ監督の作品観るのは四作目ですが、これはなんだか脚本が甘い気がします。金貨の落とし主は正体不明なのに、TV局や由緒あるチャリティ協会が裏を取らないのは不自然に思ったのですが、イラン社会ではそれが通常?
TV出演してチヤホヤされて浮かれているラヒム一家よりも、徹底して事実確認を求める人や、「落し物返却なんて当り前やんなんで褒められてんねん俺に金返せや」という債権者さんの方が説得力を感じました。
事実関係はシンプルなのに、関わってくる人々の思惑がちょっとずつ影響を与え、状況は込み入ってくる。そんなバタフライ効果的なストーリーは自分好みですし、SNSの噂や動画拡散がさらに大きな影響を与えるあたりはとても現代っぽい。
現代風過ぎて、たとえば最近の某高校サッカー部動画問題なんかのほうがよほどセンセーショナルで盛り上がる(映画化とかされないかな)のです。

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