「掌の小説」2022/06/12 00:18

言わずと知れた大文豪・川端康成による、4、5ページくらいの小作品集。いわゆる掌編小説ってやつですが、一本は短くとも、百数十本も収録されているのでトータルは結構な分量です。
そして内容はというと、短すぎてどこをポイントに読んでいいのか分からない、「そこで終わるの!?」って感じで、感傷を切り取ったイメージ映像みたいに思えます。登場人物は老若男女様々、著者の踊り子好きとか、盲目の祖父と暮らした自伝的要素とかがふんだんにうかがえます。それが、あんまり面白くない。
ところが、終盤に入って来て、何故か面白くなってくる。どこがどう違ってきているのか、具体的には言い表せない。
各編の制作年は正確には分かりませんが、おそらく古いものから順に収録されていて、戦争のはげしくなってきた頃から終戦後の作品の方が、若い頃に描かれた作品よりもずっと読みやすいのです。同じように感傷とイメージを小さく切り取ったような作りなのに。
これを読もうとする人には、後ろから読み進めることをお勧めしたいです。
印象的だったのをいくつか挙げると、「顕微鏡怪談」「小切」「化粧」「愛犬安産」「木の上」など。

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