「窓際のトットちゃん」2022/08/28 22:46

講談社文庫の新装版、カバーデザインが和田誠、イラストはいわさきちひろ。
「きみは、本当は、いい子なんだよ」
心が洗われる。子供たちの純粋さと、それを見守る大人たちのあたたかさが。
トットちゃんは一生懸命。手足に麻痺のある泰明ちゃんに初めての木登りを体験させてあげたくて、汗だくになって押し上げ引っ張り上げる。
不安定な脚立の上でかなり危ないことをしているのだ、安全管理の観点から見れば。でも、二人の真剣さと信頼関係がすばらしくて、それを危ないからって否定することなどとてもできない。
小説でも映画でも、「世の生き辛さ」がテーマになりがちな時代です。トットちゃんも小一で学校を退学になる、大変落ち着きのないタイプの子供で、「普通」という型にはめようとするととても「生き辛」かったことでしょう。幼いながらも漠然と疎外感を懐いていた彼女は、しかし、自分を責めない両親と、自分を受け入れて育んでくれたトモエ学園によって、皆から愛される大人に成長したのだ。環境って、大事だ。子供と接する大人たちの資質って、大事だ。
「生きづらい人」じゃなくて、「生きづらい社会」なのだということが良くわかる。
1981年刊行、ベストセラーとなってから40年以上経つのに、子供の資質を認めるトモエ学園のような初等教育は、未だ社会の主流とはならない。

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