「ケイコ 目を澄ませて」2023/01/21 09:50

祝、毎日映コン大賞。三宅唱監督や岸井ゆきのも受賞。22年の主演女優賞は倍賞千恵子の総ナメかと予想していましたが、ベテランの円熟以上に若者の挑戦とひたむきさを買われましたか。

ボクシング映画をちゃんと観るのは初めてかもしれません。しかし、これが映画向きな題材なのは、分かったように思います。
鍛えられ、研ぎ澄まされた運動の美しさは、フィルムに焼き付けるのにとても相性が良い。
その一方で、この作品は、主人公の雑多な日常も、同じ重量で描き出す。
実在の聴覚障害ボクサーをモデルにし、みんながマスクをしている時代の不都合さもエピソードに盛り込まれています。しかし主題はそれではない。
ハンデを乗り越えてプロボクサーになり、ほぼ毎日ジムに通い、毎朝ロードワークをこなす。彼女の熱心さ、目の輝きは、雄弁に語ります。ボクシングが好きだと。
ところが、人間は複雑。トレーニングはキツいし、試合は勝っても負けても痛い。そんなところへ、お世話になっていたジムの閉鎖が告げられる。……辞め時か?
強くなんかない。
多くを語らぬヒロインの、素直な声を聴くために。
この映画は、観客の方こそが、目を澄まそうとする。