「秘密」2017/01/22 15:59

作っている製品は全然違うのですが、今の私の勤め先も自動車部品作っているので、主人公の勤め先の空気がなんとなく分かります。他の小説にはあんまり出てこない単語とか。製造業、工業男子たちの世界。理系作家・東野圭吾だ。
しかしながら職場シーンはちょびっとで、ほとんどが、秘密の夫婦の物語。「君の名は。」みたいな人格入れ替わりモノだと思っていたのですが、事故死したお母ちゃんの魂が小学生の娘さんに入ってしまう、一方的な憑依状態。
はたから見たら父娘、実質は夫婦!?な奇妙な生活が始まるのですが。
つまらないわけじゃないけど、なんか読んでいてモヤモヤしてしまいます。人格憑依という状況も特殊ですが、専業主婦から若い娘に変身!な直子さんの、デキスギっぷりもまた特殊に思えて。
勘が良くて強い意志を持ち、頑張り屋さん。人生が激変した状況で、勉強を頑張り受験戦争に打ち勝ち、学生として優秀、主婦として家事もこなす。言うことも至極まっとうで、最善の結果を手に入れる。……つけいる隙がない感じが、読んでて引いちゃうんです。
こういうしっかりした人間が、稀にいるのは分かるんですが。
全部夫からの目線で語られているので、彼の目に映らない彼女自身の苦悩や苦労がしっかり描かれれば、また印象が違っているかもしれません。

「復讐はお好き?」2016/10/09 22:54

先月まで放送されていた「91Days」、オリジナル脚本による、なかなか渋くてハードな物語で毎週ハラハラと楽しんでいました。復讐のために友を殺せるか!?
で、こちらの小説はもっとライトな復讐劇。一ページ目からヒロインが真っ逆さまに海へ落下していくシーン(笑)です。シニカルなユーモアのある文章で、何とか助かった彼女が、自分を突き落した夫に対する復讐を決意する……
と、ここまでは面白かったのですが、だんだん、飽きてきてしまうのです。……みみっちいのです、全体的に。まず、復讐相手であるチャズがどうしようもなく小者で、クズ野郎すぎて。ヒロインのジョーイも、窮地から生き延びるところまでは根性を見せるのですが、それ以降は大したことしていなくて。夫にネチネチと精神的苦痛を与えていくっていうのも、なんか陰湿に思えてきます。ある程度追いこんだら、あとはさっさと警察に訴えたらいいのに。
復讐劇そのものよりも、環境破壊についての描写のほうが印象的でした。作者のハイアセンさんは、もともとその分野を追求するジャーナリストさんだったそうで。垂れ流される農業排水、それを誤魔化す企業とお抱えエセ学者。
……たまたまなんですが、ニュースで新市場の汚染について盛り上がっている時期に読みましたからねえ。

「死国」2016/08/31 23:45

今年はお遍路逆打ちの年、らしい。ご利益アップ!?宗教関係者だか旅行会社だかが、盛り上げようとしているとか。

坂東眞砂子作品は、多分初めて読みます。デビュー作なので、登場人物がケータイ持っていないのが新鮮というか違和感というか。
その昔四国は死者の国で、左回りにお遍路すると、死者が蘇る。という、トンデモ設定。
霊媒やっていた女の子がこの世に蘇って好きだった男を手に入れようとする。
正直、霊だからどうとかいうより、生きている人も含めた女たちの暗い執着心が不気味な話です。
怖くはないけど、禍々しい。

「リプリー」2016/05/22 10:52

The Talented Mr.Ripley
アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」で有名(見たことないけど)。
同性愛者のパトリシア・ハイスミスの原作小説で、てっきりゲイ小説だと思っていたのですが、分類はミステリ。
家なし職なし貧乏アメリカ人青年トム・リプリー君が、同い年でお金持ちのイタリア在住ディッキーと友達になり、仲が悪くなると彼を殺してディッキーに成り済ます。一人二役で警察や友人たちの追求をかわしていく……
トム君は本当に小狡く立ち回ってぜんぜん好きになれないのですが、自分のみじめな生き方を嫌って、セレブな生活、裕福で明るく輝くディッキーに憧れる感じは切実で、憎めないキャラでもあります。ずっと二人仲良くしていられたらよかったのにね。
友達を亡きものにし、司直の追求におびえながらも、幸運(ていうか、悪運)に恵まれて、働きもせずに他人のカネで優雅な生活、イタリア各地をリッチに旅してまわるトム君。
羨ましいというか、殺意湧くっていうか。

「永遠の0」2015/12/24 00:11

戦後70年の師走に、戦後60年のお話。
はっきり言えば、映画の方がおもしろかったです。
その昔の日本人がいかに愚かな戦いをしていたか、どれだけ人の命を粗略に扱ってきたか。
たくさん人が死んでいく話で。
読んでいて辛くなってきます。映画版のように、軍艦や戦闘機格好いいなー、なんてとても思えません。悲惨さが、前に出ます。
ゼロ戦と戦闘機乗り達は素晴らしい戦いっぷりでした。でも軍のお偉いさんたちは全然ダメな戦い方でした。というのが主題みたいなもの。
戦後60年を生きる若者たちが、特攻死した祖父・宮部のことを調べるため関係者たちからお話を聞くのですが、関係者の皆様方、とってもよくお勉強なさっていて。
ご自身の体験談や宮部さんとの思い出話だけじゃなくって、戦後色々調べた(としか思えない)戦争話をめっちゃ語ってくれます。
けっこうページ数のある小説で、これを一本の映画にまとめた脚本凄いなーって思っていたのですが、「勉強の成果」の部分を除いて映像化できる部分だけに絞れば、かなりボリュームダウンします。
主人公の宮部さんが良く出来た人すぎるとか、筆者の勉強の成果お披露目会的なカンジとか悲惨な歴史の負のエネルギーが強いおかげで、映画に比べて感動は薄い。
でもとにかく、勉強にはなりました。

「しゃばけ」2015/11/30 23:57

畠中恵の、ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。続編もたくさん出ていて、読んだことなくても何となく設定は知っている、有名シリーズですが、今まで読もうとしなかったのは何故か。
まず、主人公の男の子が優しくて男前で、でもオシが弱くて。典型的草食男子なところが、何か物足りなく感じて。
そして何よりも、霊力のある人間の男の子が様々な妖怪たちとワイワイやってるって、どうしても、「夏目友人帳」の亜流に思えてしまう。私の中で、この手の分野はハードルが高くなります。
「しゃばけ」シリーズは設定を江戸時代に、お話をミステリ仕立てにしていて。
うーん。
面白くないわけではないけど、パンチが足りないなあ。
可愛らしさが売り、のお話みたいなんですが。
化け物が次々と人に取りついて殺人を犯すのですが、殺された方も、取りつかれて狂った殺人犯にされてしまった方も、彼らのご家族にとっても、大変不幸な、ヒドイ話です。とんだ災難です。
そうした怖さにはあんまり触れられていなかったのですが。
可愛い妖怪話にしてしまって、エエんですか?

「探偵ガリレオ」2015/10/31 00:30

文庫巻末解説によると、もともと佐野史郎さんをイメージして書かれた探偵だったそうで、読んでみればなるほど、そんな感じがします。
しかし、今ではもう、先日結婚報道で大騒ぎになった福山某さんのシュッとしたイケメンイメージが世間には定着してしまっていますよねえ。
そんな、大ヒットドラマの原作本なのですが。
思ったより、面白くない。つまらないわけじゃないけど、特に心に響かない。
謎な部分が、科学的化学的知識が有れば分かるけど無ければわかりっこないのでパズルとしては楽しめない。
ぶっちゃけ理系オンチには、簡単な説明でも退屈で。サイエンスの深淵に迫るような詳細な説明がされるほどのページ数はない。
役者の魅力的にも実験の効果にしても、文章より視覚に訴えるドラマ向きだったんだろうなあ。

「老人と海」2014/09/28 23:26

 釣りの話でした。
 ド貧乏な老漁師が、丸二日以上も一匹の大魚と戦い、とうとう勝利したのですが、二日の間に沖に出すぎてしまって、港に帰るまでにせっかくの獲物をみんなサメに食べられてしまいました。
 という、たったそれだけの、さほど長くもない小説なのですが。
 ヘミングウェイの人気が高いこと、ノーベル賞とっちゃうこと、納得の作品でした。
 私に魚や船についての知識がないもんだから、分かりにくい部分もあるのですが。
 戦いの荒々しい興奮、勝利の喜び、どんなに足掻いても止められない絶望、徒労に終わった脱力、そのすべてに対する、惜しみない敬意と愛情。
 本当の強さっていうのは、成果とはまた別の価値観なのだなあ。

「平清盛」2014/04/11 23:02

白波発つ荒れた海に、風に吹き千切られる雲のような題字(書:金沢翔子)。
表紙だけで、感動がよみがえってくるようです。
武士の世を目指して修羅の道を登り、頂へと立った果てに「ここは真っ暗じゃ」と惑ったり、「平家はもはや武士ではありません」と古参の家臣に突っ込まれて一言も返せなかったり、しまいに一族は都落ちして海の藻屑となってしまう・・・・
一昨年の大河ドラマのノベル本、全4巻です。
貴族も王家も武家もいろんな意味で面白かったドラマで、ノベルの方は、脚本を元にざっと筋を追っていく感じで大変あっさりしたものです。しかし登場人物が多いし名前も似たようなのばっかりで、しかも時間の移り変わりや人物の年齢も分かりにくいので、そのあたりの確認も兼ねて図書館から借りてきました。
こういうのは一話あたりがとても短くまとめられているので、通勤読書には向いています。

「イエメンで鮭釣りを」2014/03/01 17:18

 アラビア半島南部の砂漠の国に川を作り、英国から鮭を大量輸送して鮭釣りをしようというトンデモ作戦を描いた、ポール・トーディのベストセラー小説。
 12年日本公開された英映画「砂漠でサーモン・フィッシング」が面白かったので原作本を図書館で借りてきたのですが。
 映画の方が面白かったです。川とか砂漠とかの風景映像の力もありますが、何よりもストーリーが、原作よりいろいろマイルドになっていて。
 本書は鮭プロジェクトに関するメールとか議事録とか雑誌記事や個人の日記などで構成されています。これがちょっと、イライラさせられます。
 主人公の水産学者・ジョーンズ博士は映画よりももっと草食性が強いイメージです。真面目な良い人なのですが、奥さんの尻に敷かれています。こんな自己中で感じの悪い奥さんとはさっさと別れれば良いのに、と思わずにいられません。
 思ったより毒気が強かった。そしてイイ人たちがみんな残念な結末になってしまって、後味悪いのですよね。ジョーンズ博士自身は、そんな結末になっても自分が信じたことなので納得しているのですが。
 ご都合主義であろうとも、映画版の方が良かったです。