「花戦さ」2017/06/26 00:32

どの花が美しいか。
どれも、それぞれに。
なーんて、某アイドルグループの代表曲みたいなマトメになったけど。
期待以上に面白かったです。戦国末期の時代の暗さもあるのですが、ユーモラスな部分も結構あります。「花の中に、仏様がいる」……野村萬斎演じる池坊専好の、人に優しく天真爛漫なキャラクターの魅力が、お話を殺伐とはさせません。
クローズアップを多用した映像で、豪華キャストの熟練の表情(頭踏みつけられる佐藤浩市とか!)の演技とお花の可愛らしさを味わえます。
ベテランはもちろん、中堅も若手も子役も犬に至るまでキャストに文句なし。京都が舞台なので京・大坂人はみんな上方言葉でしゃべるし。
久石譲の音楽も相変わらず良かった。
森下佳子脚本は、冷静に考えれば多少無理のありそうな強引な話の展開でも、キャラクターの魅力と勢いで細かい疑問を吹き飛ばして楽しませてくれます。

「ヒトラーの忘れ物」2017/02/12 23:06

LAND OF MINE
ヒトラーは出てきません。この人のインパクト知名度を以て観客の注意を引こうとする意図はわかるんですが、ワンパターンな邦題になるのが残念。
忘れ物の話では、あります。デンマークで、忘れられつつあった歴史。
憎しみから始まる映画です。
自分たちの国を支配していた「ナチスの兵隊」を、人々が憎むのは当然。さらに、海岸に設置された大量の地雷を、当の「ナチスの兵隊」たちに撤去させようと考えるのも、(捕虜の待遇として非人道的ではありますが)分からない話ではありません。
しかし。
「ナチスの兵隊」たちを、一人一人の人間と見れば、その多くがまだ高校生くらいの少年。故郷に帰って、勉強して働いて稼いで……将来を夢見る彼らが、食料もろくに与えられずプロでも危険な地雷除去作業をすることになり、
ドカン!
彼らの監視役であるデンマーク人軍曹は、「ナチスの兵隊」という集団として憎み、それぞれ個別の「人間」として親しみと同情を寄せて、難しい葛藤が生まれます。
そして最後にとった彼の決断に驚きました。
人間を人間としてみれば、なかなか、憎み切れないんだ。

「ビリギャル」2016/12/28 00:44

休み前のルンルン気分で、好物のオムライスを食べつつ、昨夜録画していたのを再生。
昨年のヒット映画。その前に話題になった原作本の、流行りの長ったらしいタイトル(関係ないけど、長いタイトルの第一人者は村上春樹だと思う)がいまいち私の趣味じゃなかったのですが。
中身は、非常にまっとうな青春小説でした。話の結末は最初から分かっているし、その過程も、特にひねりがあるわけでもないのですが、それでもちゃんと面白いのです。
登場人物の配置が、(本当にオーソドックスなんだけど)一人一人ちゃんと生きています。ヒロインの頑張りも熱いですが、それ以上に、先生とお母さんのイイ人っぷりが感動的です。
自分のことを良く見て、考えてくれる。情熱を持って接し、アドバイスしてくれる。
そんな存在がそばにいれば、人は頑張れるし、力を出せる。

「淵に立つ」2016/10/29 10:52

カンヌで「ある視点」部門審査員賞受賞。
タイトルそのままなテーマ。最初から、普通にチグハグで不穏な食卓。崖っぷちとか川っぷち、足を滑らすギリギリのラインに立ちながら、それを見ないふりして歩くイメージが、その後もずっと続いていきます。
浅野忠信の異様さが際立つ。白と赤のコントラスト、一人称小説の独白のような長台詞。ピンと糊のきいたワイシャツの白が、チグハグながらも「普通」だった食卓を異様な空間に変える。家族写真をとったら心霊写真みたいで、むしろ笑う!
普通の一家に中に入り込んだその異質感・異様さは、良くも悪くも、とも思えます。異様すぎて現実味が薄い。
しかし、そのインパクトはやはり絶大で、後半は全然出てこない(奥さんの見た幻以外)のに、不在という存在感で物語の軸となり続けている。
でもやっぱり、彼が出てこない方が画面がリアルになります。もともと危ういバランスだった一家が、さらにボロボロになって、それでも共に生きていく。
浅野忠信のインパクトが強いですが、他の役者陣もみんな良かったです。後半登場の太賀が、普通の好青年を、普通なんだけどちゃんとした存在感でさらに一家を崖っぷちに追い詰める感じが良かったです。
インパクトも説得力もある良作、でもストーリーも映像も音楽も役者も、全力で不穏さを漂わせるので、楽しい気持ちにはならないモヤモヤ映画です。
パンフレットについた脚本を読むとけっこうカットされた場面があって、そこは入れてくれた方が話のつながりが分かり易かったかなあ。

「ブラック・スワン」2016/04/16 23:37

観終わってからも、しばらく脳内に響く「白鳥の湖」。もう、この曲、狂気のメロディーとしか認識できなくなってくる。
しばらく前に深夜放送されていた見逃し映画を録画。真面目でいい子なバレリーナが念願の主役を掴んだもののプレッシャーで精神不安定になって、結果として自分の影の部分を開花させて圧巻の舞台を演じるという……単純なストーリーなのですが、ヒロインが狂気に侵されていく様子が見事すぎる。役者の演技力と、映画としての演出力。
どこまでが妄想でどこまでが現実か、ヒロインにとっても観客にとってもあいまいで、不穏で不安な緊張感が作られる。役者の演技力と、映画としての演出力がすばらしい。
こういう映画って、バレエシーンは主演のナタリー・ポートマン自身がやっているのでしょうか。
ナタリーさん、たしか大学進学とかで休業していたはずですが、銀幕に復活しないかなあ。

「ヘイトフル・エイト」2016/03/12 15:15

雪山を行く馬車。いつの時代かと思ったら、南北戦争後。猛吹雪の山中で、訳ありの人々が一か所に集まって、そして起こる惨劇・・・
という設定なので、ゴシック・ミステリの系統かと思って、実際に途中まではそんな感じだったのに。
推理とか犯人探しとか駆け引きとか、ただの飾り。メインは、血みどろ殺しまくり脳漿飛び散り。まともな良識ある人いません。
タイトルに偽りなし。相手を苦しめ、痛めつけ、殺す。サディスティックなほどに。
タランティーノ作品ってちゃんと観るのはこれが初めてかも。食事前には向かない映画ですね。

「ピンクとグレー」2016/02/27 16:25

グレーっていうか、思った以上にドス黒かった。原作は現役ジャニーズアイドル作の小説。行定勲監督、菅田将暉出演ってことで観に行きました。
前半は青春モノ、男2女1三人組幼馴染。
一人はイケメン(中島裕翔)だけどあまりに出来すぎなヤツで、でも誕生日祝いを計画してくれたお友達に一言もなく、同居人に一言も相談なく引っ越しを決めちゃったり、さらに一言も相談なく謎の自殺をやらかしたりと、なんかヤな感じ。
もう一人は対照的なダメ男(菅田)。気持ちは分からんでもないけど、ダメすぎて。
女の子(夏帆)は可愛いけど、イケメン君が気になるけどスターになっていって存在が遠くなって、一方でダメ男の方もなんか放っておけなくて、という・・・・
この三人の配置がなんだか定型すぎて、でも男どうしの友情っていうかジャレアイっていうか、こんなものなのかなあって思っていたら。
監督さんの超映画的演出で、クルクルオセロをひっくり返すような作りに素直にビックリ。前半はおおむね原作小説のままでしょうが、後半の「芸能界の歪み編」って、どこら辺までが映画オリジナル展開なんだろうか。
出演役者はみんな良かったけど、中でも、出番はちょこっとなのに、「ラスボス」柳楽優弥の存在感が印象的でした。異様に目に力がある。
最後のオチがいまいちで、意図的に「しょーもな」って感じにしたかったのでしょうが、一気にガクってなってしまう。それに続いて流れるアジカンの「Right Now」の勢いで誤魔化された感じもしないでもない。

「二つ目の窓」2014/09/29 23:03

 安全への配慮のためなのでしょう、「自転車のふたり乗り」というシーンがとんと見られなくなってきました。夏になってもゆずの名曲がラジオから聴こえなくなってしまったのも、そういうことなんでしょうか。
 ただし、映画の世界ではまだ「二人乗り」表現は許されているようです。五月に観た「そこのみにて光輝く」の男どうしの自転車二人乗りもほのぼのしていましたが、やっぱり基本は、高校生のカップルによる二人乗りですね。
 無条件にエネルギッシュで、微笑ましくて、甘酸っぱくて、鉄板です。

 川瀬直美監督作品はフランス人好みの難解なイメージが強くて鑑賞前は「ちゃんと理解できるかな」と心配していたのですが、それは良い意味でも悪い意味でも、取り越し苦労でした。
 奄美大島で育った少女の家庭は、親子三人とっても仲良しで、しかし島のユタである母親は病に侵され死期が迫っている。
 都会から移り住んできた少年は、親が離婚していて、共に暮らす母親が父親以外の男と会っていることを汚らわしく感じていて、付き合っている彼女に求められても応じることができない。
 という設定からして、大変わかりやすい対比です。それに加えて、なにかと親切な解説がついてくるのです。少年少女の成長のお話でもあるので、周りの大人たちが説教っぽいことを語るのも分かるのですが、ちょっと押しすぎな気がしました。
 哀れっぽいヤギの断末魔のシーンとか、確かにインパクトがあってナマナマしくって、でも強すぎて、なんかワザとらしさを感じます。
 島の人々の振る舞いや、唄や、荒々しい波や、台風の迫力や、少年少女の真摯な眼差し。そんなのだけでも結構な説得力があるのです。生と死と、自然と人と、男と女の有りようが、ビシビシ伝わってきます。
 ラストシーンも美しかったのです。美しい海を、力強く泳いでいく少年と少女。
 そこでビシっと締めてくれればよかったのに、島の爺さんのセリフなんて入れてしまった。蛇足感が、残念。

「春を背負って」2014/06/14 22:25

 え、これで終わり!?
てな感じでした。まさかのバカップル場面のラスト。映画タイトルにある「春」って、そっちの意味ですか!
いえ、幸せそうで結構なのですが、冒頭の大雪に覆われた山地で、一歩一歩足を進めていく小林薫の渋さと、あまりに対照的で。
映画封切り前に出演俳優がトークバラエティ系のTV番組に出てくることはよくあることですが、監督がガンガン宣伝出演しているのがよく目につきました。そしてこの木村大作監督、キャラがなんか面白いんですよね。業界の大御所だからってのもあるのでしょうが。「カメラマン」ではなく「キャメラマン」って紹介されてるのがもう、「特別感」「印象付け」をねらってる。
で、さすがのベテラン「キャメラマン」が監督しているだけあって、雄大な風景や可憐な花の色とか、大変キレイです。
登山の知識はまるでないので、山小屋の賑やかな様子は興味深かったです。
山小屋での松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司の三人のホノボノ感も良いです。
でも、なんか、話が普通なのです。
この監督の前作「劔岳」が、結構意外なオチを持ってきてくれていたので、普通のままエンディングになってしまったのに肩すかしを感じたのでしょうね。
豊川悦司が、結構いいセリフを言っていて、演出次第ではとても印象的なのでしょうが、なんか浮き上がってしまいます。
そして主演の松ケンが、普通の素朴な山の青年過ぎて、個性の強い蒼井(ショート・ヘア可愛い)とトヨエツの役柄に比べると、なんか薄い。
映像としての格好よさは抜群の映画。
人間模様を楽しむなら、原作小説読んだ方が味わいがあるんじゃないかと思いました。

「BUDDHA2 手塚治虫のブッダ―終わりなき旅―」2014/02/27 10:53

 オープニングから、生きることの厳しさ必死さが描かれます。
 他者を食らって生きる。そして別の他者に食われて、相手を生かす。
 生命のつながり。

 原作は未読ですが、手塚治虫の漫画は格好良いと思います。
 三部作アニメ映画の第二弾。前作は堺雅人目当てでしたが、今回は松山ケンイチと真木よう子の声の出演を楽しみに観に行きました。声の芝居もお上手。
 第一部ではほとんど何もしなかった主人公のシッダールタ君ですが、苦しみから脱するために出家して苦行の旅に出ます。これが、苦行っていうか拷問部屋みたいです。で、苦しむばっかりでも、逆にゆるんじゃってもだめだ、中道を行くぞ、という結論に達し、目覚めた人、ブッダになるのです。
 それはいいのですが、自分の家族が敵国に捕まってしまっているのに、そのことについて一言も言及がないのが不自然に感じました。勢いとスピード感のある展開で盛り上げていく感じだったので、色々端折っている部分も多いのでしょうが。
 生きることは苦しいです。苦しんでもがいて死んでいく姿に泣けてきます。
 それでも、生きることには意味がある。