「ペンギン・ハイウェイ」2018/09/04 00:47

もう夏も終わりなんだけど夏映画。森見登美彦原作のSF(すこし、ふしぎ)アニメ。
主人公のアオヤマ君は怒らない。怒りそうになるとおっパイのことを考える。
一般的な小学生っぽいとは言えない彼は、大人にとっての(というか、おそらくは原作者にとっての)理想小学生。努力家で理屈っぽく、一日一日が立派な大人になることに繋がっていくことを意識していて、つまりは希望の未来を見据えている。とても多忙、と言うけどそれは塾とかお稽古事じゃなくて、自分の興味ある分野を研究・考察することに向けられる。
町に出現したペンギンとか、チェスの腕前を上げるとか、お姉さんのおっぱいとか、世界の果てとか。アオヤマ君はいろんな謎に関心を持つけど、ネットで物事を調べることが無い。デスクには紙の図鑑があり、現物に対し観察・実験を行い、手書きでノートにまとめる。そしてたいそう理知的なお父さん(この人もある意味理想的な父親像)とちょっぴり哲学的なお話をしてヒントを得る。
私から見れば、可愛くもあもり生意気でもあり頼もしくもあるアオヤマ君。同年代の小学生から見たら、どう思うのだろう。……原作小説は別に子供向けじゃないから、子供ウケする必要はないのかも。
ストーリーよりも、アオヤマ君の特異なキャラクターと彼の夏の日々に共感できるか否かが重要な気がしました。

「パンク侍、斬られて候」2018/07/12 00:03

クドカン作品は、TVドラマは何本か観たことあったけど、劇場作品は初めてかもしれない。
主演・綾野剛。だけど、もうお猿さん主役でいいんじゃないだろうか。
お猿さんたちがカワイイお話。そして、なんか超越したお猿が語っていく(千里眼か何かを得ているらしく、人間心理も動機もイチイチ説明つけてくる)、デタラメな人間たちのお話。
治世を預かる者(殿様以下)が自分本位でおかしなことやっていると、領地全体がメチャメチャになるってことなのですが。
世の中キレイごとだけではないのは分かるけれど、あまりにもヒドイ有様に、サッパリ笑えない。どいつもこいつもバカばっかり。
時代劇の皮を被った現代風刺と見える部分もあるけど、……ナンセンスありえない系の落語をもっとグロテスクにしたようなイメージ。

「ハン・ソロ」2018/07/02 01:20

ハリソン・フォードじゃないソロなんて。
と思っていたけどつい金曜ロードショウを観てしまい、踊らされるまま、先週に引き続いて三条までGO!
結論を言うと、観に行って正解。スピン・オフとして申し分ないエピソード。脚本のカスダン親子のお父さんの方が、エピソード5と6でもお仕事していたのが大きいのでしょう、カユイところに手が届く感じっていうか。
どのシーンもいちいち格好良くて目が離せない。
迫力のアクションから目が離せない。
しかも。
ポンコツって言われる前の見た目も実力も備えたミレニアム・ファルコンから目が離せない。
暗黒の工業都市、戦争中の泥の惑星、雪の惑星での列車襲撃、資源惑星の鉱山、寂れた海辺……いろんな惑星での冒険、また冒険に目が離せない。
お馴染みのキャラクターも新規の方々も、ちゃんとキャラが立っていました。
年月が経ってもこのキャラは変わらない、チューイの魅力が光る。画面に出てくるだけで頼もしさとなごみの両方をもたらしてくれる、有能な相棒だ。

「ペンタンゴン・ペーパーズ 最高機密文書」2018/04/15 15:42

The Post
先月から次から次へと社会面に登場する「コンナン出ました~」というニュース、言うまでもなく例の朝日のスッパヌキ記事から生まれた現象で。
この時他の報道機関の立場から見れば「ぐあああああやられたああああ!!!!!!」って七転八倒もんで、この追い越されを挽回すべく超本気猛然と各方面に取材攻勢をかけそこへ情報リークする者も出て……
あまりに「それ、今更出てくんの!?」が続いてちょっと飽きがきてしまう(そんなこと言っちゃダメなんだけど)ようなところへ、さらに新聞モノ映画。
土地値引き権力者忖度とベトナム戦争とではスケールが違いますが、上記のようなことを思いつつ鑑賞すると味わい深い。
最初の方は、あんまり面白くないのです。文書コピー取るシーンなんて映像としては地味なもんですし、背広のオッチャン方が大勢画面に出てくるけどイマイチ人間関係つかめない、株式公開の会議も小難しい、そしてヒロインである社主(メリル・ストリープ)、彼女の立場の弱さ押しの弱さ自信の無さが、なんか全体の地味さを表わしているような。
それが、しまいにはただ新聞記事が活字になって印刷されているだけのシーンにとても感動的を覚えるようになってしまうのだから。
スピルバーグの社会派映画をちゃんと見るのは初めてかも。エンタメでなくても、やっぱり面白いなあ。
権力者の圧力を前にして、会社を守るために引くか、会社の使命を守るために進むか。
割と良くあるテーマではありますが、王道ってのは偉大です。
ジャーナリズムの物語(主にトム・ハンクスが担う)であると同時に、女性の物語でもある。
家族経営の新聞社で前社長の妻という立場でお飾りのトップ、みたいな扱われ方だったケイさん。経験も浅く性格的にも「向いていない」と言いながら、それでも真面目に目の前の問題に向き合ってきたのでした。
経済状況が悪い中で政権を敵に回すリスク。個人的にも親しくしていた政府要人(お友達ってやつです)の敵にまわってしまう。
その中で、静かに、穏やかに、決断を下す。
でも、一番感動的だったのは、政府vs新聞社の判決でした。
これが日本だったら、判事はここまでジャーナリズムを称える言葉を述べるでしょうか…

「火垂るの墓」2018/04/14 00:54

金曜の晩から、ずーーーんと気分が重くなる金曜ロードショウ。
アンデルセン賞受賞で魔女宅が放送されるかと思っていたら、突然の訃報。
で、何年振りかで観ていたのですが、案外中身覚えているものです。ストーリー自体はシンプルだからか、作品の力ゆえか。
せっちゃんの可愛さに騙されそうですが、結構キツイ。冒頭から死んでる主人公、母親の無残な姿、ころりと死ぬ蛍、幼子の衰弱していく様。
子供向けアニメでシビアで悲しい結末って「フランダースの犬」が有名ですが、しかし、ノリと笑い重視な最近は、そういうのあるのかなあ。「コナン」や「ワンピース」にも可哀想エピソードはあるものの最後は明るく締めるから。
はたから見れば確かに幼児と遊んでる日常なセイタ君。居候暮らしの肩身の狭さを耐えることのできなかったお兄ちゃん。
妹を大切に思っていたことは確かだけど。
それに逃避した面もあるのだろうなあ。
彼だって辛かった、大切な妹と美しい思い出にすがらざるを得なかった……

「秒速5センチメートル」2018/01/02 23:40

2016年大ヒットの新海誠監督の、2007年作品、深夜TVで放送。
3話構成で、1話の切なさがすごく、良い。中一男子にとって、東京から栃木までの旅はとんでもなく遠距離だよねえ。しかも、電車は雪で進まない。山崎まさよしの歌が切ない。
それでも会いに行く少年、それでも待ち続ける少女。
しかしそれが、どうしてこうなった?2話の内容からてっきり彼女はお亡くなりになったのかと思ったのに、3話でちゃんと登場、しかも結構幸せそう。
逆だなあ、と思いました。「君の名は。」は二人が心通わせていく過程をバッサリカットしていましたが、「秒速」の方は二人の交流が途絶えた理由が描かれない。中一の時点ではたびたびお手紙のやり取りしていたのに、成長してケータイも持つようになってからの方が疎遠になるとか……
まあ、ありきたりに考えれば、遠くにいる人との絆を保ち続けることより身近に生じるアレコレに向き合う方を大事にしたってことなんでしょうが……
遥かな距離、ゆっくりと変化させる時の流れ、届かない思いを抱えた孤独感。

「花戦さ」2017/06/26 00:32

どの花が美しいか。
どれも、それぞれに。
なーんて、某アイドルグループの代表曲みたいなマトメになったけど。
期待以上に面白かったです。戦国末期の時代の暗さもあるのですが、ユーモラスな部分も結構あります。「花の中に、仏様がいる」……野村萬斎演じる池坊専好の、人に優しく天真爛漫なキャラクターの魅力が、お話を殺伐とはさせません。
クローズアップを多用した映像で、豪華キャストの熟練の表情(頭踏みつけられる佐藤浩市とか!)の演技とお花の可愛らしさを味わえます。
ベテランはもちろん、中堅も若手も子役も犬に至るまでキャストに文句なし。京都が舞台なので京・大坂人はみんな上方言葉でしゃべるし。
久石譲の音楽も相変わらず良かった。
森下佳子脚本は、冷静に考えれば多少無理のありそうな強引な話の展開でも、キャラクターの魅力と勢いで細かい疑問を吹き飛ばして楽しませてくれます。

「ヒトラーの忘れ物」2017/02/12 23:06

LAND OF MINE
ヒトラーは出てきません。この人のインパクト知名度を以て観客の注意を引こうとする意図はわかるんですが、ワンパターンな邦題になるのが残念。
忘れ物の話では、あります。デンマークで、忘れられつつあった歴史。
憎しみから始まる映画です。
自分たちの国を支配していた「ナチスの兵隊」を、人々が憎むのは当然。さらに、海岸に設置された大量の地雷を、当の「ナチスの兵隊」たちに撤去させようと考えるのも、(捕虜の待遇として非人道的ではありますが)分からない話ではありません。
しかし。
「ナチスの兵隊」たちを、一人一人の人間と見れば、その多くがまだ高校生くらいの少年。故郷に帰って、勉強して働いて稼いで……将来を夢見る彼らが、食料もろくに与えられずプロでも危険な地雷除去作業をすることになり、
ドカン!
彼らの監視役であるデンマーク人軍曹は、「ナチスの兵隊」という集団として憎み、それぞれ個別の「人間」として親しみと同情を寄せて、難しい葛藤が生まれます。
そして最後にとった彼の決断に驚きました。
人間を人間としてみれば、なかなか、憎み切れないんだ。

「ビリギャル」2016/12/28 00:44

休み前のルンルン気分で、好物のオムライスを食べつつ、昨夜録画していたのを再生。
昨年のヒット映画。その前に話題になった原作本の、流行りの長ったらしいタイトル(関係ないけど、長いタイトルの第一人者は村上春樹だと思う)がいまいち私の趣味じゃなかったのですが。
中身は、非常にまっとうな青春小説でした。話の結末は最初から分かっているし、その過程も、特にひねりがあるわけでもないのですが、それでもちゃんと面白いのです。
登場人物の配置が、(本当にオーソドックスなんだけど)一人一人ちゃんと生きています。ヒロインの頑張りも熱いですが、それ以上に、先生とお母さんのイイ人っぷりが感動的です。
自分のことを良く見て、考えてくれる。情熱を持って接し、アドバイスしてくれる。
そんな存在がそばにいれば、人は頑張れるし、力を出せる。

「淵に立つ」2016/10/29 10:52

カンヌで「ある視点」部門審査員賞受賞。
タイトルそのままなテーマ。最初から、普通にチグハグで不穏な食卓。崖っぷちとか川っぷち、足を滑らすギリギリのラインに立ちながら、それを見ないふりして歩くイメージが、その後もずっと続いていきます。
浅野忠信の異様さが際立つ。白と赤のコントラスト、一人称小説の独白のような長台詞。ピンと糊のきいたワイシャツの白が、チグハグながらも「普通」だった食卓を異様な空間に変える。家族写真をとったら心霊写真みたいで、むしろ笑う!
普通の一家に中に入り込んだその異質感・異様さは、良くも悪くも、とも思えます。異様すぎて現実味が薄い。
しかし、そのインパクトはやはり絶大で、後半は全然出てこない(奥さんの見た幻以外)のに、不在という存在感で物語の軸となり続けている。
でもやっぱり、彼が出てこない方が画面がリアルになります。もともと危ういバランスだった一家が、さらにボロボロになって、それでも共に生きていく。
浅野忠信のインパクトが強いですが、他の役者陣もみんな良かったです。後半登場の太賀が、普通の好青年を、普通なんだけどちゃんとした存在感でさらに一家を崖っぷちに追い詰める感じが良かったです。
インパクトも説得力もある良作、でもストーリーも映像も音楽も役者も、全力で不穏さを漂わせるので、楽しい気持ちにはならないモヤモヤ映画です。
パンフレットについた脚本を読むとけっこうカットされた場面があって、そこは入れてくれた方が話のつながりが分かり易かったかなあ。