「セールスマン」2017/07/23 23:20

何年か前に観た「別離」がとても良かったので、ファルハディ監督の今作も期待して観に行きました。
「別離」に比べるとちょっと分かりにくかったというか。タイトルにもなった劇中劇の「セールスマンの死」もタイトルしか知らなかったし。パンフレット見て初めてあのシーンはこういう意味だったのか理解できた点がチラホラ。
イランの人々がとても誇り高く、その分体面を気にするし辱的な態度を取られることに過敏に反応するということがミソです。
善良で気の良いひと。それが、状況の変化によってイライラトゲトゲした別の顔になるのが、とても自然に上手に描き出されます。
アクシデントがあって、いろんな意味で傷ついた夫婦。
神経質になって、でも忘れたいそっとしておいてほしい妻。
どうしても報復したい夫。
後味の悪さは、「別離」以上のものがありました。

「聖の青春」2017/01/08 23:12

原作小説が大変熱いということで、期待していた一本だったのですが。
なんだか色々、ピンとこない。主人公の印象が凄く悪い。見た目はきったないお部屋で少女マンガ読んでるおデブさん。やることも言うことも結構ヒドイ。羽生さんに対する意識が強すぎてライバルっていうより熱烈なファン(しかもちょっとストーカー入ってる)みたい。そして何より解せないのが、子供のころから重い病だったっていうのに健康を保つ気遣いをする様子がまるでない。
脚本も演出も微妙。将棋シーンに大阪のスーパーやら駅ホームやらのシーンを挟み込むとかなんか古臭い。勝負の厳しさも羽生さんの凄さも伝わらない。
役者陣はみんないい味出しているのに。もったいない。
主人公が自分の短い人生をやれる限り我を張ってやりたいように突っ走ったってことは伝わりました。
体重の増加ばかりが話題にされた松山ケンイチは、毎年のように主役クラスで映画出演しているけど、「デス・ノート」以外に当たり作品が無い(大河ドラマも凄く面白かったのに視聴率は振わなかった)のがザンネンです。

「シン・ゴジラ」2016/10/02 23:16

次はこのノリで、「創龍伝」やってくれないかなあ。総理も自衛隊も、都市を破壊する巨大怪獣も出てくるし。

いろんな観方のできる映画でしょう。
私は、コメディだと思って観ていました。3.11パロディ。そりゃあ、巨大怪獣の上陸は想定外でしょうねえ。
その昔、「踊る大捜査線」が刑事ドラマに<会議・お役所>要素を取り込んできましたが、ゴジラ最新作はそれを怪獣映画に、もっと徹底して盛り込んできた感じ。
CGゴジラは案外着ぐるみっぽい動きだと思ったら、野村萬斎の動きだったとは。クレジット見てどこに出演してたのかと思ったら、中の人……
それから、自衛隊ってこんなにたくさん兵器持ってたのかーって思いました。現実として、実戦で使われることのない、そしてゴジラ相手では役に立たない兵器。……リアルを追求するなら、ゴジラ上陸以降自衛隊員がバタバタ退職願いを出すシーン(某死神ノート漫画で、対策本部刑事たちがぼろぼろ一抜けたしたみたいなの)が欲しい所でしたが、そんな脚本だったら自衛隊の協力が得られませんよね。
そこらへんが、この映画に足りてないところなのでしょう。人間のナマっぽいところが削ぎ落されているというか。せっかく実力派の役者を揃えているのに、演出が細かすぎるのか、変に型にはめられている感じ。政治家/官僚目線で早口に現状説明をしていく舞台装置っていうか。石原さとみだけが個人的なエゴを全面に出しますが、それも組織人的日本と個性重視米国、という一種の型なのかもしれません。
怪獣映画ってそんなものなんでしょうか?
この映画で最も手に汗握ったシーンは、電車アタック(!)でした。これは予想外の戦法で、耳慣れない兵器の名称を並べられるよりもずっと威力をイメージしやすく、ビジュアル的にも面白く思いました。

「死霊館 エンフィールド事件」2016/08/28 23:47

ウォーレン夫妻の「本当にあった心霊調査」シリーズ第二弾。母親と子供4人でちょっぴり苦しい生活をしているホジソン家に、ポルターガイストが発生する。
今回も色々怖い映像を見せてくれましたが、でも、三年前の前作の方が恐怖感は上な気がしました。
ウォーレン夫妻の絆とか、ホンモノニセモノ論争とか、次女の不安定な心理(母親に信じてもらえなかった)とか、「自分の味方になってくれる存在」という要素をストーリーに盛り込んだせいかもしれませんが。
けっこう早いうちからラスボスの姿を描いていたり、憑依霊が色々喋って名前まで名乗ってくれたりと、「敵」の姿が明瞭になると、恐怖心よりもキャラクターの不気味さとか気持ち悪さが先に来る。
TVリモコンがいつの間にか移動しているとか、誰もいないのにオモチャが走り出すとか、椅子がするすると勝手に動くとか。そういう事象の積み重ねの方が、案外怖いんです。
明らかに霊が取りついた椅子をどうして捨ててしまわないのか。教会に属して心霊調査やっている人がそんな禍々しい絵を描かないでよ、とかツッコんだり。
さて、ジェイムズ・ワン監督の携わった「ライト/オフ」観に行こうかどうしようか。

「セトウツミ」2016/07/09 10:55

哀愁あるアコーディオンの調べ。
ただ喋って時間を潰すだけの青春で、何が悪い。

堺市内で撮影された、ということは知っていましたが、想像以上にドンピシャでした。見覚えのある川辺、ビルには地元を代表する食品メーカーの看板、味気ないブロック塀が続く通学路、どこにでもあるような校舎がちらっと映るだけでもちゃんと分かる母校。
明らかに、自分の出身校の周辺ロケだ。原作漫画(未読)もそのまんまこの辺を描いているそうで、作者もここら出身なのだなあ。
お話は、帰宅部の高校生が関西弁で雑談しているだけ、という漫画としても映画としても大変斬新なもの。のっけから「第一話」と出ていて、0話とエピローグを含めて全8話構成、全体でも75分の作品。こんなに地味なのに、クスクス笑いながらいつまでも見ていたくなる不思議。
アクションがあるでもなく、主な場面はほとんど川辺だけ。
さぞかし低予算制作だろうと思わせる作品で、しかしその分主演の出演料は奮発した模様。瀬戸役を菅田将暉、内海役を池松壮亮。なにせ会話劇なので、演技派役者の実力が問われることになる。
そして、大森立嗣監督(「さよなら渓谷」は良かった)による演出なのだから。
堺市も、もっとこの映画アピールすればいいのに。

「STAR WARS/フォースの覚醒」2016/03/06 23:58

このシリーズを一本も見たことない人から「いつの時代のハナシ?」と問われたのですが、初っ端に「遠い昔のこと」と。それから怒涛のごとく流れる状況説明・・・お馴染みの体裁。そしてストーリーも、第一作目(エピソード4)をなぞる。船が襲われ、重要機密を託されたロボットが逃亡、主人公と巡り合って・・・・惑星を破壊するほどの破壊力を持つ敵の武器。しかし基地の警備状況があまりにスカスカという。
ご都合主義な展開はモリモリありますが、まあ、ストーリーの細かいところをつついてもしょうがない。すべては、フォース(なんでもアリ超能力)のせいなのです。
ヒロインが想像以上に可愛かったので、それですべて良し。戦う美少女イイなあ。
ボロ船、と言われながらファルコン号が飛び回ってくれると、やはり熱くなります。カッコイイ。
しかし、笑ってしまったのは、ハン・ソロの息子がえらく若くて青臭かったこと。ハリソン・フォードはすっかりジイさんなので、孫くらいに見えてしまいます。遅くに生まれた息子、レイア高齢出産だったのかあ。
お話はいかにも続くって感じなので爽快感よりモヤモヤ感が残る。
ヒロインのレイと、ソロの息子、二人の若者が今後それぞれの道をどう歩んで成熟していくのか。

「最強の二人」2016/01/09 14:59

たいへん評判の良い映画でしたが、公開当時全くのノーマーク作品でした。
タイトルから、バトル・アクションものだと思っていたから。
そういう意味の「最強」ではない。でもなんか納得の「最強」。
芸術に造詣があり、首から下が動かない障害者のお金持ち。
陽気で下品で遠慮のない、貧乏な黒人。
楽しい友情物語。
二人が出来すぎなくらい対照的で、お金持ちのおっさんの邸宅が本当に豪勢な宮殿みたいで、なんだか返って作り物めいた現実感の無さも感じるのですが。
映画冒頭、「これは事実を元にして」と言われてしまうと。
こんな、夢のように素敵な人間関係が、実現できるのだということが感動的っていうか、なんか、希望を感じてしまいます。
己と違う種類の人間を排除する風潮は根強く、じわじわと広がっていく気配すらあるけれど。
お金では買えない、まさに最強のふたり。

「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」2016/01/03 00:27

年末年始は見逃していた映画のTV放送を見まくる習慣でもあります。
原作をチラ見して「これすっごいよく分かる!」と感動したのですがいつの間にか上映期間が終わってしまっていた作品。
どうしても劇場で、って作品じゃないですが、佳作だと思います。
年齢も職業も違う、でもなんとなく気の合う三人の女性が、それぞれの人生であれこれにコツンとぶつかり、それぞれに前を向いていく。
こないだ観た「恋人たち」も主人公三人の人生のハードルをかわるがわる描いた映画でしたが、「すーちゃん」の方はもっと軽やかです。元々が四コマ漫画ですし、彼女たちの悩みとリアクションが、ごくごく普通の女性像にフィットしています。劇的にドラマチック、とはいかないけど、等身大っていうか、共感しやすい。
そして、華やか。可愛い。出来事自体は普通の女性っぽくても、演じる女優さん方の美しさは普通じゃないですから。そこがステキでもあり、敗因でもあるのかなあ。私は特に柴咲コウ(すーちゃん)が好きなんですが、まばゆい美しさ堪能です。
美しい女優さん方がキャッキャして、女子力高そうなカワイイお部屋に、おいしそうな料理。エンディングもカワイイ。彼女たちの味わう苦い思いアレコレを、中和してくれます。
一つ残念だったのは、全体的に説明が丁寧すぎたこと。最初のうちは、原作と同じように登場人物たちの「一言感想」って感じの短い詠嘆で括っていたのですが。
特に最後の、すーちゃんの「追伸」としての独白は、バックの映像だけでも十分伝わってきたので。丁寧で分かりやすいのはイイのですが、最後だけは、やりすぎな気がしてちょっともったいない。

STAR WARS―エピソード4、5、62016/01/02 11:45

紅白にまで出てきたベイダーさん。
新作の宣伝がスゴイですが、観に行きたいような、怖いような。
インディ・ジョーンズがジイサンなのは全然かまわないけど、ハン・ソロが年喰っちゃうのは何か、イヤ。
旧三部作が好きで。先月TV放送(何故か、全部違う放送局)されていたのを録画してまとめて鑑賞したのですが、やっぱり、面白いです。
自分が生まれる前の70年代作品なのに、全然古く感じない。一作目のアクションシーンとか見ていると、とってもゲーム向けだなあ。
改めて思うのは。
ルーク(いかにも主人公な好青年)、ソロ(アウトロータイプ)、レイア(行動派毒舌ツンデレ姫)の三人組と、チュウバッカと二体のロボットのマスコット組。
彼らの掛け合い、チームワークが良いのです。壮大な宇宙を舞台にした善と悪の戦い、なんてタダノ添え物です。
やはりTV放送されていたエピソード1も見てみたけど、そういう魅力がサッパリ感じられなかったんですねえ。子供がはしゃいでいるばっかりで。女王様可愛いけど、それだけで終わっちゃう感じで。
新作、どうしようかなあ。

「裁かれるは善人のみ」2015/11/29 11:48

不思議な国です。
他国のゴタゴタに乗じて武力を以て勢力圏をひろげ。
隠しようがないのにバレバレの嘘でしらばっくれて。
こっそり国家プロジェクトとしてドーピングを推進し。
無関係な民間航空機を誤爆で撃墜し。
自国の旅客機も自爆テロで落とされ。
テロとの戦いと称していろいろ爆撃し、その戦闘機も撃ち落とされた。
よそから非難されれば「他国が自分たちを不当に叩いている」と被害者意識を持ち、自国がルール違反をしていることには目を瞑る。
強靭な精神をもった国が、広大な領土と資源と武力、使えるものは何でも使い、したたかに、なりふり構わず突き進む。
そんな国だからこそ、ドストエフスキーとかの文学が生まれたんだろうなあ。
なんて思わせる、2014年のロシア映画。
身もフタもない邦題が付いていますが、これが本当に理不尽なお話で、主人公のオッチャンは祖父の代から住み続けた土地と家を奪われ、友人を失い奥さんにも死なれ、果ては無実の罪で有罪判決を受けてしまう。
原題はLEVIATHAN。巨人も恐竜も出てこないけど、もっと凶暴な怪物が、無力な一般市民を襲う。主人公一家が日常を過ごしていた空間を文字通りに引き裂いたショベルカーを、おどろおどろしく映します。
映像的にはロケ地の自然映像も秀逸で、北方のド田舎の海辺の、大きくて荒涼とした美しさは、日本ではなかなか表現されない種類のものです。
土地の再開発を計画する市長との対決と同時進行で、主人公サイドの人々の抱える微妙で暗い人間関係も浮かび上がって来て、人間ドラマとしての側面もキッチリ見せます。
主人公が奪われた土地に新たにできたのは、豪華な教会でした。ロシアの社会批判のみならず、教会批判までぶつけてくる。よくロシアで上映できたもんです。
以前見た「顔のないヒトラーたち」もいろいろ盛りだくさんな映画でしたが、リッチャレッリ監督はさまざまな要素をキレイに整えて映画にしたのに対し、ズビャギンツェフ監督の方は、もっと荒々しく(しかし計算づくで)叩きつけてきます。
象徴的なのが、市長の手先である裁判官の読み上げる判決文。実はコメディ映画だったのかと思うくらい、ものすごい勢いの早口で棒読み。判決なんて分かりきっていて裁判なんて形式以上の意味なんてないのだと、突きつけられます。