「娼年」2018/05/03 16:37

R18、観客の9割女性、尻・乳・太腿、パンフレット完売の文字。
これ、以前は舞台で上演されていたって凄いなあ。
何が面白くないのか、暗い目をした無気力大学生が、ある夜オバちゃんに誘われて娼夫になり、なんかイキイキしてくるお話。
あんなにいい娘が尽くしてくれてるのに、熟女好みとは……
人間の持つ原始的欲求のひとつ、性愛がテーマで濡れ場シーンだらけで、でも色気とかエロスとかはあんまりないです。都会の景色や音楽はオシャレですが、ゴム必至とか、生々しさを目指しています。
でも、私痛いシーンは苦手だあ。
松坂桃李くん演じるリョウ君は、人々が求める様々な形の性愛に対し、びっくりしながらも引いた様子はなく受け入れる。それでいて、お金を頂くためのビジネスに徹した態度でもなく、ちゃんと相手に敬意と慈しみを持って接する。
……こういう商売に需要があるっていうのは納得できる感じです。
それでも、主人公は最後には夜の世界からカタギに戻るのだろうと思っていたのに、まだまだ続けていくんだ。

「THE SHAPE OF WATER」2018/03/16 00:15

“まとも”って、なんなのか。
ヴェネチア国際に続いて、米アカデミー賞も。たとえば「E.T」とか、「アバター」とか。どんなに高評価でも異形系はアカデミー賞取りにくいって話だったのですが、それを覆して。
美女ではなく声も出せない中年清掃婦、でも生々しく「女」であるヒロインと、半魚人のロマンス。「反・美女と野獣」の視点としては大成功。半魚人のグロテスクで獰猛な面と美しく神聖さを感じさせるデザインも秀逸だと思いました。言葉もなく名も知らずただただお互いだけを求める二人。
周到に計算された、間違いなく良い作品。
と、思う一方で、なんか、釈然としない、何故だろう?
差別や偏見や血みどろグロテスクはリアルなのに、話の展開はご都合主義的(ラブストーリーはお互いのすれ違いが無いと盛り上がらない)で結末は後味悪く思えたからか。
日本にある異種婚姻譚って、鶴にしろ龍にしろ狐にしろ、たいてい人の形を取っているイメージ。そしてみんな美形。その辺まで含めてファンタジーだと思う。「八犬伝」は人間に化けたりしませんが、だからといって交尾するシーンとかは無い(たぶん)。
それを、この映画は映像化してしまう。グロイと思うか美しいと思うか。そういえば「魔法使いの嫁」も骨男への輿入れ(こちらは美少女だけど)だ、異種婚姻譚ブームなのかな。
イライザさんは美人ではないなりにチャーミングさも持っていましたが、半魚人と近づいていくにつれ、なんかエキセントリックなパワーが出てきます。
他の登場人物は、ゲイの老絵描きさんも、ロシアのスパイ学者さんも、話好き世話焼き黒人女性も、米国的マッチョリズムの嫌な男も、それぞれの立場・性質からその言動はおおむね理解できて、言い換えればそれはある種の類型ってこと。
でもイライザさんだけは異色。でもそう感じるのは私だけで、異種婚姻譚ブームだし、異形ロマンスありですっていう人は案外多いものなんだろうか。

「関ヶ原」2017/10/14 23:44

勝利するのは誰だ。まっすぐ筋を通す義か、巧妙な野心家の利か。
日本全国で刃も火薬も使わない「戦」が繰り広げられている今だからこそ、観たい映画。
なーんて、たまたま偶然のタイミングですが。
400年以上前の大合戦も、本当は刃も火薬も使わない時点から始まっていたのですが、それでも、やはり圧倒的なのは合戦シーンでした。ぶつかり合い転げまわる兵、槍衾、爆発、戦場を駆ける軍馬の蹄の響きとか、スクリーンで観る価値はあったと思います。
原田眞人監督と言えば美しい映像。それと芸達者な役者さんをふんだんに使った群像劇のイメージも強いです。でも登場人物多すぎて、ちょっと、「シン・ゴジラ」を思い浮かべました。あそこまでではないけど、セリフ早口でどんどん進めていって、余韻が薄い。まあ、大河ドラマみたいにジックリ人物描写はできませんからね。
豪華俳優陣で印象的だったのが、
主演・岡田准一。この人は男前だけど背があんまり高くないから時代劇向きだなあ。大河ドラマで鍛えられてますし、乗馬姿がキマっている。
対照的に、ひょろ長い東出昌大。大きいのに何故かちょっと頼りない情けない系が似合う彼が、戦場の悩める若者・小早川秀秋。
平岳大さんの島左近がものすごく強そうで頼もしさ抜群。
あんな太った役所広司観たことない、野心家・徳川家康。
有村架澄が可愛すぎる。お姫様ですかってくらい。甘いラブ・ストーリー要素を入れたがるのも原田監督らしい。
松山ケンイチ演じる直江兼続のシーンは演技も演出もサイコーに格好良かったのですが、にもかかわらず「別に省いても良かったんじゃないの」と思ってしまうのはこのシーン以外は全く影も形もない空気なキャラになっているから。役者のせいじゃない、脚本のせい。

「セールスマン」2017/07/23 23:20

何年か前に観た「別離」がとても良かったので、ファルハディ監督の今作も期待して観に行きました。
「別離」に比べるとちょっと分かりにくかったというか。タイトルにもなった劇中劇の「セールスマンの死」もタイトルしか知らなかったし。パンフレット見て初めてあのシーンはこういう意味だったのか理解できた点がチラホラ。
イランの人々がとても誇り高く、その分体面を気にするし辱的な態度を取られることに過敏に反応するということがミソです。
善良で気の良いひと。それが、状況の変化によってイライラトゲトゲした別の顔になるのが、とても自然に上手に描き出されます。
アクシデントがあって、いろんな意味で傷ついた夫婦。
神経質になって、でも忘れたいそっとしておいてほしい妻。
どうしても報復したい夫。
後味の悪さは、「別離」以上のものがありました。

「聖の青春」2017/01/08 23:12

原作小説が大変熱いということで、期待していた一本だったのですが。
なんだか色々、ピンとこない。主人公の印象が凄く悪い。見た目はきったないお部屋で少女マンガ読んでるおデブさん。やることも言うことも結構ヒドイ。羽生さんに対する意識が強すぎてライバルっていうより熱烈なファン(しかもちょっとストーカー入ってる)みたい。そして何より解せないのが、子供のころから重い病だったっていうのに健康を保つ気遣いをする様子がまるでない。
脚本も演出も微妙。将棋シーンに大阪のスーパーやら駅ホームやらのシーンを挟み込むとかなんか古臭い。勝負の厳しさも羽生さんの凄さも伝わらない。
役者陣はみんないい味出しているのに。もったいない。
主人公が自分の短い人生をやれる限り我を張ってやりたいように突っ走ったってことは伝わりました。
体重の増加ばかりが話題にされた松山ケンイチは、毎年のように主役クラスで映画出演しているけど、「デス・ノート」以外に当たり作品が無い(大河ドラマも凄く面白かったのに視聴率は振わなかった)のがザンネンです。

「シン・ゴジラ」2016/10/02 23:16

次はこのノリで、「創龍伝」やってくれないかなあ。総理も自衛隊も、都市を破壊する巨大怪獣も出てくるし。

いろんな観方のできる映画でしょう。
私は、コメディだと思って観ていました。3.11パロディ。そりゃあ、巨大怪獣の上陸は想定外でしょうねえ。
その昔、「踊る大捜査線」が刑事ドラマに<会議・お役所>要素を取り込んできましたが、ゴジラ最新作はそれを怪獣映画に、もっと徹底して盛り込んできた感じ。
CGゴジラは案外着ぐるみっぽい動きだと思ったら、野村萬斎の動きだったとは。クレジット見てどこに出演してたのかと思ったら、中の人……
それから、自衛隊ってこんなにたくさん兵器持ってたのかーって思いました。現実として、実戦で使われることのない、そしてゴジラ相手では役に立たない兵器。……リアルを追求するなら、ゴジラ上陸以降自衛隊員がバタバタ退職願いを出すシーン(某死神ノート漫画で、対策本部刑事たちがぼろぼろ一抜けたしたみたいなの)が欲しい所でしたが、そんな脚本だったら自衛隊の協力が得られませんよね。
そこらへんが、この映画に足りてないところなのでしょう。人間のナマっぽいところが削ぎ落されているというか。せっかく実力派の役者を揃えているのに、演出が細かすぎるのか、変に型にはめられている感じ。政治家/官僚目線で早口に現状説明をしていく舞台装置っていうか。石原さとみだけが個人的なエゴを全面に出しますが、それも組織人的日本と個性重視米国、という一種の型なのかもしれません。
怪獣映画ってそんなものなんでしょうか?
この映画で最も手に汗握ったシーンは、電車アタック(!)でした。これは予想外の戦法で、耳慣れない兵器の名称を並べられるよりもずっと威力をイメージしやすく、ビジュアル的にも面白く思いました。

「死霊館 エンフィールド事件」2016/08/28 23:47

ウォーレン夫妻の「本当にあった心霊調査」シリーズ第二弾。母親と子供4人でちょっぴり苦しい生活をしているホジソン家に、ポルターガイストが発生する。
今回も色々怖い映像を見せてくれましたが、でも、三年前の前作の方が恐怖感は上な気がしました。
ウォーレン夫妻の絆とか、ホンモノニセモノ論争とか、次女の不安定な心理(母親に信じてもらえなかった)とか、「自分の味方になってくれる存在」という要素をストーリーに盛り込んだせいかもしれませんが。
けっこう早いうちからラスボスの姿を描いていたり、憑依霊が色々喋って名前まで名乗ってくれたりと、「敵」の姿が明瞭になると、恐怖心よりもキャラクターの不気味さとか気持ち悪さが先に来る。
TVリモコンがいつの間にか移動しているとか、誰もいないのにオモチャが走り出すとか、椅子がするすると勝手に動くとか。そういう事象の積み重ねの方が、案外怖いんです。
明らかに霊が取りついた椅子をどうして捨ててしまわないのか。教会に属して心霊調査やっている人がそんな禍々しい絵を描かないでよ、とかツッコんだり。
さて、ジェイムズ・ワン監督の携わった「ライト/オフ」観に行こうかどうしようか。

「セトウツミ」2016/07/09 10:55

哀愁あるアコーディオンの調べ。
ただ喋って時間を潰すだけの青春で、何が悪い。

堺市内で撮影された、ということは知っていましたが、想像以上にドンピシャでした。見覚えのある川辺、ビルには地元を代表する食品メーカーの看板、味気ないブロック塀が続く通学路、どこにでもあるような校舎がちらっと映るだけでもちゃんと分かる母校。
明らかに、自分の出身校の周辺ロケだ。原作漫画(未読)もそのまんまこの辺を描いているそうで、作者もここら出身なのだなあ。
お話は、帰宅部の高校生が関西弁で雑談しているだけ、という漫画としても映画としても大変斬新なもの。のっけから「第一話」と出ていて、0話とエピローグを含めて全8話構成、全体でも75分の作品。こんなに地味なのに、クスクス笑いながらいつまでも見ていたくなる不思議。
アクションがあるでもなく、主な場面はほとんど川辺だけ。
さぞかし低予算制作だろうと思わせる作品で、しかしその分主演の出演料は奮発した模様。瀬戸役を菅田将暉、内海役を池松壮亮。なにせ会話劇なので、演技派役者の実力が問われることになる。
そして、大森立嗣監督(「さよなら渓谷」は良かった)による演出なのだから。
堺市も、もっとこの映画アピールすればいいのに。

「STAR WARS/フォースの覚醒」2016/03/06 23:58

このシリーズを一本も見たことない人から「いつの時代のハナシ?」と問われたのですが、初っ端に「遠い昔のこと」と。それから怒涛のごとく流れる状況説明・・・お馴染みの体裁。そしてストーリーも、第一作目(エピソード4)をなぞる。船が襲われ、重要機密を託されたロボットが逃亡、主人公と巡り合って・・・・惑星を破壊するほどの破壊力を持つ敵の武器。しかし基地の警備状況があまりにスカスカという。
ご都合主義な展開はモリモリありますが、まあ、ストーリーの細かいところをつついてもしょうがない。すべては、フォース(なんでもアリ超能力)のせいなのです。
ヒロインが想像以上に可愛かったので、それですべて良し。戦う美少女イイなあ。
ボロ船、と言われながらファルコン号が飛び回ってくれると、やはり熱くなります。カッコイイ。
しかし、笑ってしまったのは、ハン・ソロの息子がえらく若くて青臭かったこと。ハリソン・フォードはすっかりジイさんなので、孫くらいに見えてしまいます。遅くに生まれた息子、レイア高齢出産だったのかあ。
お話はいかにも続くって感じなので爽快感よりモヤモヤ感が残る。
ヒロインのレイと、ソロの息子、二人の若者が今後それぞれの道をどう歩んで成熟していくのか。

「最強の二人」2016/01/09 14:59

たいへん評判の良い映画でしたが、公開当時全くのノーマーク作品でした。
タイトルから、バトル・アクションものだと思っていたから。
そういう意味の「最強」ではない。でもなんか納得の「最強」。
芸術に造詣があり、首から下が動かない障害者のお金持ち。
陽気で下品で遠慮のない、貧乏な黒人。
楽しい友情物語。
二人が出来すぎなくらい対照的で、お金持ちのおっさんの邸宅が本当に豪勢な宮殿みたいで、なんだか返って作り物めいた現実感の無さも感じるのですが。
映画冒頭、「これは事実を元にして」と言われてしまうと。
こんな、夢のように素敵な人間関係が、実現できるのだということが感動的っていうか、なんか、希望を感じてしまいます。
己と違う種類の人間を排除する風潮は根強く、じわじわと広がっていく気配すらあるけれど。
お金では買えない、まさに最強のふたり。