「淵に立つ」2016/10/29 10:52

カンヌで「ある視点」部門審査員賞受賞。
タイトルそのままなテーマ。最初から、普通にチグハグで不穏な食卓。崖っぷちとか川っぷち、足を滑らすギリギリのラインに立ちながら、それを見ないふりして歩くイメージが、その後もずっと続いていきます。
浅野忠信の異様さが際立つ。白と赤のコントラスト、一人称小説の独白のような長台詞。ピンと糊のきいたワイシャツの白が、チグハグながらも「普通」だった食卓を異様な空間に変える。家族写真をとったら心霊写真みたいで、むしろ笑う!
普通の一家に中に入り込んだその異質感・異様さは、良くも悪くも、とも思えます。異様すぎて現実味が薄い。
しかし、そのインパクトはやはり絶大で、後半は全然出てこない(奥さんの見た幻以外)のに、不在という存在感で物語の軸となり続けている。
でもやっぱり、彼が出てこない方が画面がリアルになります。もともと危ういバランスだった一家が、さらにボロボロになって、それでも共に生きていく。
浅野忠信のインパクトが強いですが、他の役者陣もみんな良かったです。後半登場の太賀が、普通の好青年を、普通なんだけどちゃんとした存在感でさらに一家を崖っぷちに追い詰める感じが良かったです。
インパクトも説得力もある良作、でもストーリーも映像も音楽も役者も、全力で不穏さを漂わせるので、楽しい気持ちにはならないモヤモヤ映画です。
パンフレットについた脚本を読むとけっこうカットされた場面があって、そこは入れてくれた方が話のつながりが分かり易かったかなあ。

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