「The Public」2020/08/29 16:32

監督・制作・主演がエミリオ・エステベス。
邦題に「図書館の奇跡」って副題がつきますが、言うほどミラクルなお話ではないように思います。むしろ、地味なくらいリアリズムな描き方です。図書館は立派で魅力的だけど、ホームレスたちのお話なので絵面的美しさには欠ける。
図書館あるある理不尽、ホームレスたちの結束、勝手なこと言うマスコミ。司書をやっているスチュアートは、真面目だけど口下手で同情心と押しの弱さで騒動に巻き込まれていく。雄弁で無い分、歌や文学作品からの引用を使うのは、納得できるけどちょっとズルい。
体臭を理由に市民を図書館から追い出すのは人権侵害なのか。凍死するかもしれないホームレスたちが避難場所を要求して図書館に立てこもるのは不法占拠なのか。「公共」の有り方を問う着眼点も、個々のキャラクター造詣も、非暴力なラストも興味深いのですが、何か物足りない。
あるいは、逆に色々詰め込みすぎて散漫になってしまったか。テーマ性よりも、巻き込まれた主人公が貧乏クジで気の毒に思うほうが強く残ってしまう。行政がホームレスたちに避難場所を用意すれば、それだけで解決できるお話なのに、それができない。
メガネをかけて、視界がクリアになる演出。ほんの少し目先を変えるだけで、大事なところは見えるはずなのです。

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