「星の子」2022/09/25 22:39

秋の気配を感じるひんやりした朝、鉢植えに青虫発見。
葉っぱを食べるアゲハの幼虫、これが春夏だったら即駆除ですが、この季節、緑の葉はもう枯れていくばかりで青虫が食べてもさほど美味しくないでしょうし、最近の台風にも負けずにここまで大きくなったと思うと、もののあはれがあります。
さて、無事にサナギ化して越冬できるか、栄養不足で干からびるか。
害虫という認識を外すと、明るい緑の体も灰青の斜めのラインも、きれいなものです。

朝日文庫、巻末に作家の小川洋子との対談(2017年)付き。
今村夏子、芥川受賞作が異様に面白かったし、昨年の映画「花束見たいな恋をした」で主人公カップルが注目していた作家だったし、「星の子」は一昨年映画版を観ていました。
そして、映画の原作小説を、今、改めて読んでみたのは、この物語の主人公、ちーちゃんことちひろちゃん中学三年生は、新興宗教信者2世だったからです。
印象だけでいうと、原作より映画の方が面白かったです。小説を呼んだ段階でストーリーをすでに知っていたからというのもあるでしょう。映像によって林家の住居生活水準が下がっていく様子や両親の宗教的習慣(彼らにはふつうのことだけど)の異様さに、文章以上にインパクトが出るのも強い。役者さんの力(主演・芦田愛菜)もあります。
もちろん、小説の方が状況や人物の説明が多く、理解しやすい。ちーちゃんは思ったよりメンクイ食いしん坊キャラでした。ラストの微妙さは原作の方が余韻を感じました。映画、もう一度見返したい。
お金に不自由し、お姉ちゃんは家出して音信不通、憧れの南先生にはドン引きされるし、困ったことも多い。
しかし、彼女は両親のことが好きで、宗教団体のイベントに参加するのも好きで、いい友達に恵まれ、けっこう楽しくやっているのです。
身を寄せ合い冬の夜空を見上げ、流れ星を探す三人の親子。
その微笑ましさと温かさと不安定さは、どこか、秋の朝の青虫に似ている気がする。

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