「木挽町のあだ討ち」2026/04/30 18:16

見たい夢を作り出す。
東映時代劇、主人公は武士で派手なチャンバラで始まりますが、メインは芝居小屋のみなさんの、心意気。
人を死なせる一芝居、人を死なせない一芝居。
武士の世界は「形式を通すためにそこまでやらなきゃならんのか」という残酷さ、情けは切り捨てご免。歌舞伎の武家物も、忠義のために女房子供を犠牲にするのが基本ですから。
そんな窮屈さを皮肉るように、心優しい少年を助けようとする心優しい大人たち。
しかし、……もっと早い段階で少年剣士に真相を教えてあげれば良かったのに。みんな秘密主義だ。

劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ2026/01/12 22:43

正月休みに録画していた、19年公開劇場版シティーハンターを観て、震えるほど懐かしさがこみ上げる。TVシリーズの主題歌が随所に流されていましたし。
主演の神谷明さんは年齢的にもうヒーロー然とした台詞は厳しいのでは無いかと思っていましたが、それでもやっぱり格好良い。お馴染みの、あり得ない感じの戦闘シーンはちゃんと派手で面白い。すごいや。
XYZは、時代劇シリーズみたいに一種の様式として、長く受け継がれていってもらいたいものです。

「爆弾」2026/01/03 15:56

爆弾で街も人も吹き飛ばす映画。
と、思っていたら、人々の精神面もドカンと破壊する。
自称「スズキタゴサク」が出すナゾナゾ(?)を解いて、仕掛けられた爆弾を捜索する。取調室と捜索現場を舞台に、テンポ良く話が進みます。
役者さんもみんな達者です。取り調べ刑事が主人公のなのですが。人の心理の裏をつついてくる、スズキを演じる佐藤二朗の怪演がインパクト強すぎ。

「ナイトフラワー」2025/12/31 22:25

内田英治監督のオリジナル脚本は、結構ツッコミどころもあるのですが。ボスが末端の売人に素顔や拠点を簡単に見せちゃうとか。犯罪実録的なリアリズムを求める作品ではありません。昼間の厳しさに根を張った、夜に咲く幻想。
大切なモノを持ち続けるのは、辛く、厳しく、熱く、美しい。
一人は子育てのために。一人は格闘技を頑張るために。
二人の女が手を組んで、薬を売り歩く。
もう、明るい結末になりようがないストーリーですが、彼女たちは暗い泥沼を共に戦い、楽園を目指します。
思ったより力の入った総合格闘技の試合、そしてヴァイオリン演奏が印象的。

「国宝」2025/08/02 00:07

六月にリアル人間国宝の「残月」の静謐さに感銘を受けましたが。
話題の映画「国宝」は激しさや華やかさ重視の演目を揃えて、歌舞伎っぽいというか、映像で盛り上げるならこうこないと、っていう。
身も心もボロボロのグシャグシャになって死んでいく「曽根崎心中」の、必死の形相はちっとも美しくない。ただ、鬼気迫る迫力があります。
たどり着きたい場所、成就させたい舞台。
半世紀の時をかけ、主人公が歌舞伎界の御曹司と切磋琢磨したり血筋の壁にぶつかったりしながら、芸の他に全てを失っていくお話。才能は認められていたのに、師匠の養子にはしてもらえなかったのですよ。なんて孤独で、厳しい。
他の登場人物たちはけっこうエピソード端折られている感じですし、長い原作小説の方も今度読んでみようと思います。

「教皇選挙」2025/04/30 23:31

CONCLAVE
近々本物の教皇選挙が行われるし、映画の方も観に行こう。同じように思った人は少なくないのでしょう、劇場は人多く、パンフレットは完売の札。
ネタバレ厳禁。そうか、こう来るか。というラストでした。
世界中から選挙権被選挙権を持つ枢機卿たちが集まる。使用言語が英語だったりイタリア語だったり。公用語はラテン語なのでしょうか?
旧来のカトリックの姿勢を取り戻すのか、現代に合わせた改革を進めるか、アフリカ系初か、辞退したい者か、野心家か。
時期教皇が決まらぬまま投票が繰り返され、次々と波乱が起こる。
仰々しい宗教的権威が大写しにされ、同じ衣装の老眼男に埋め尽くされた画面はピントが合っていない部分が極端にぼやけ、呼吸音を息づかいとしてあえて聴かせてくるのがうるさく感じられる。ちょっと苦手な種類の映画です。
そこへ風穴が空き、亀が地を這う。

「事実無根」2025/03/02 23:12

京都のご当地自主制作映画で、冒頭から見たことある風景が。上映回数少ないこともあってか、休日は満席、めでたく上映期間延長。作品の舞台になっているカフェにも、一度行ってみたいです。
したたかな妻に捨てられた、親父ふたりが泣く。娘の素直な頑迷さが個性的。不器用に人生やっている人びとに優しい系のホームドラマ。
登場人物たちは、少しずつ嘘をつきます。
他者を思いやる嘘もありますが。
自分のつく嘘は致し方ないことで。
他人に嘘をつかれると不快になる。
自分の心を守りたい。人間なんて弱くて勝手なもの。
でも、それだけではない、本音のことばと、人とのつながりが描かれます。

「ベルサイユのばら」2025/02/09 23:10

原作未読、宝塚も見たことないので、仏革命というと教科書の記述と「レ・ミゼラブル」と「べにはこべ」のイメージ。
要所に音楽と映像を流し高らかに歌い上げるミュージカル風演出。コレのおかげで、細かいエピソードを丁寧に積み上げることができずとも(上映時間が限られますからね)、不思議と説得力と高揚感をもたらします。
激動の時代、花の都に集った若者たちの四角関係が基本ストーリーですが。
前半は、愛くるしいマリー・アントワネットが激しい思慕の情と、その痛みと喜びを知る。
後半は、凜々しいオスカルが苦悩しながらも戦い、自由な人生をつかみ取っていく。
自由に生きる。
運命に縛られながら、白と赤のばらが、美しく咲きます。

「室町無頼」2025/02/03 22:37

松竹・木下グループのお行儀の良い時代劇の次に、東映の王道アクション娯楽活劇。
応仁の乱の数年前、荒廃した都で民衆が蜂起する。首謀者は弱きを助け悪を挫く牢人、蓮田兵衛。大泉洋演じる主人公に導かれ、棒術の達人となった少年が右腕となって大活躍。
それを迎え撃つ骨皮道賢(実在の人物)は蓮田のかつての悪友という設定。
のっけから死体の山、多くのエキストラが暴れ回り、炎が世を焼き払う。大規模な撮影です。池頼広の音楽も派手でいい意味で時代劇っぽくないノリの良さ。
脚本もつとめた入江悠監督はアクションとか時代物のイメージは全然無かったのですが。こんな盛大な作品も撮るのですね。

「雪の花-ともに在りて-」2025/02/02 23:00

清廉、としか言い様がない。
天然痘撲滅のため原始的なワクチン(種痘)の普及に人生を賭ける。それが偉い政治家とか学者とかじゃなくて、一介の町医者(しかも美男美女夫婦)なのです。
医師・笠原良策を演じた松坂桃李くん、時代劇やるには背が高すぎるなー、と思うのですが、原作・吉村昭で監督・小泉堯史なら見てみたい。小泉監督らしい、人間の美しい生き様が、美しい映像(ロケ地も良い所を選んで撮影しています)と共に描かれます。加古隆の音楽も、チェロを中心とした楚々としたもの。そして相変わらず、役所広司が登場すると画面に不思議な活力が生じます。
当時の福井のお殿様が話の分かる名君だったことも大きいのでしょうが、実際には、新しい医療を試みるのは、もっと多くの困難があったはず。
病人の描写も含めて、あまりに美しすぎて迫力には欠けるのですが、ちょっと疲れているときには、こんな映画もいいな。